リコーリング・インティグニティ

第二章 小さな来訪者

 その声に驚き恵理子、そして瞳の手が止まった。
「……あぁあっっ!!……あぁ…っ!」
 それにつられるまま、快感を遮断された磔天使は身体を大きく震わすと、そのままがっくりと項垂れてしまう。
「…ユミエルお姉ちゃん……」
「な、何…?」
 またしても不意に聞こえる弱々しい声。その声に恵理子は緊張とともに辺りを見回し始める。
「……ぁ…あなた…」
 瞳が向く方向、声の主を見つけたようだ。教会の別室への扉、その入り口に。そして驚いた表情のまま「彼」に声をかける。
* * *
 その彼…いや、少年というべきか。まだ十に届いているかどうかもわからないほどの背丈、母性本能を擽られるような可愛らしい顔立ちをした男の子であった。しかしその顔についていた耳の先端は尖り、髪は地毛に組み合わさるような形で白く変色している。その両手には爪が伸びており、体付きも、必要以上に筋肉か付いてるかのように盛り上がっている。そして盛り上げられた服は所々に小さく破れたような後があった。
 例えるなら「小説に出てくるような獣人の、変身し始めた姿」である。
 そしてその子には、瞳と同じ気配を醸し出していた。すなわち…影魔の気配を。
 弱々しいながらも邪な気配を漂わせながら、その少年はゆっくりと瞳達のいる所へと近づいてくる。それを見た瞳は十字架から降り、その子に駆け寄った。
「…さっきの、お姉ちゃん?」
「えぇ…そうよ…………身体はもう…大丈夫?」
「うん……」
 瞳を確認したその少年は安堵したかのように彼女に語りかけてきた。瞳もまたそれに答えると、そのまま少年のほぉを優しく撫でる。
「瞳…その子、一体どうしたの?」
 いまだ困惑しながらも、ユミエルの傍から離れないまま恵理子が語りかけてくる。
「うん…悠美に会いたいっていうから…保護したの…」
「保護……?」
 肩から手を伸ばし、少年を抱いたままで瞳は、この少年のことについて語り始めた。
――――――――――――
「それじゃあ行っていますから。悠美のことをよろしくお願いしますね」
「…わかりました」
 まだユミエル達が教会を訪れる少し前、日が落ち始めた頃。教会の裏側の場所、人目の付かない所で光翼天使に変身したマリエルは、一足先にこの場所を訪れた瞳に一礼していた。落ち行く日を浴びながら、一層紅の衣を輝かせる天使の姿は、同性の瞳が見ても美しいと感嘆させるものであった。
 マリエルはこの学園にいる間、周囲に影魔がいるかを常に捜索していたのである。悠美とは別々、時に同時に行動しながら。そして今日もまたその捜索に向かうところで、先ごろ来た瞳にこの場所の留守を任せることにしたのである。
「でも…いいの…? 私…」
「娘の決めたことですもの。それに貴女や恵理子さんなら、安心ですわ」
 たどたどしく聞いてくる瞳に対し、マリエルは優しく微笑む。…おそらく彼女も、瞳がここに来た意味はわかっているのだ。自分が去った後にここで何が行われるのかを。それでもなお、いやだからこそ瞳を「信頼」して、こういってくれているのだ。
「真理、さん…あ」
 その言葉に、瞳は言葉をつむごうとして――
* * *
 『ガサッ!』
『っ!?』
 不意にどこからか音が聞こえてきた。二人はそれに驚き、あたりを見回し始める。
 それはこのあたりに生えている草を踏む音であった。彼女たちのいる場所は教会の周辺であり、そうそう人が来ることはない場所である。そんな場所に他の人が忍んで来るなど、普通ならありえないことだった。しかもそこから漂う気配は、常に彼女たちが向き合ってきたもの…
「エクリプス…」
 自分たちが関わってきたものと比べれば微弱なものではあるが、それは間違いなく影魔の気配であった。瞳の呟きと同時に、二人の緊張が一気に高まる。
 ガザ…ガサ…ガサ…
 茂みの音と一緒に、その気配はゆっくりと近づき…やがて太陽の光に照らされる形で影が映し出される。
「…そこにいるのはわかっているわ。出てきなさい!」
 そう言い放つと同時に、マリエルは戦闘体制をとる。それに習うようにして瞳も戦闘体制をとった。そしてその言葉を合図に、照らし出されていた影もまた一斉に地面に広がってゆく!「ユミエルお姉ちゃん!」
「え…?」
「…子供?」
 教会の壁裏から現れた影魔の実態に、二人は一瞬に固まった。
 出てきたのは子供。所々で普通の子供とは違う部分をあらわにしていたが、その姿は間違いなく男の子であったのだ。
 その姿に二人が対応する間も無く、その少年はマリエルに抱きついてきた。腰の後ろに腕を回し、そのまま豊満な胸に顔をうずめる。しかし、抱きついて少しすると何らかの違和感を感じたのだろうか…すぐにばっと顔を上げると、がっかりした顔になった。
「……ユミエルお姉ちゃんじゃない…………でも、お姉ちゃんの匂いがする…?」
 同じ光翼天使の力を感じ取っているのだろうか、あるいは親娘としての雰囲気を感じ取っているのだろうか。感じ取っているものが何なのかわからないことに首を傾げながらも、その少年は、抱きつかれたままで未だ困惑しているマリエルに尋ねる。
「お姉ちゃん、ユミエルお姉ちゃんの知り合い?」
「え?………えぇ、そう。知り合いとかじゃなくて、親娘…」
 何とか冷静さを取り戻そうと、抱きついたままの男の子になんとかそれだけの言葉をゆっくりと紡いだ。
 ―しかし次の瞬間、マリエルはさらに困惑する状態にさらされることになった。
「ねぇ! それならお願い! ユミエルお姉ちゃんに会わせて! 僕、ユミエルお姉ちゃんに会いたいんだ! どうしても会いたいんだぁっ!」
 返事を聞いた途端、その少年は泣きそうな顔になる。それと同時に、天使のウェストに回していたその両手でウェストそのものを掴み、前後に揺さぶり始めたのである。
「あ、あら! あら…あら…っ! まぁ、まぁ…っ! どうし、ましょう…!?」
少ながらも影魔の力が加わっている影響か、揺さぶられる衝動は子供が放つものではなかった。上半身をシェイクされ、目の前の光景は上下に動き回り、それにつられて背中の二対の翼も無意識の中で大きく羽ばたかされてしまう。そして紅い天使の母性あふれる胸は大きく揺さぶられ、少年の頭を何度も叩いていた。しかしそんなことはお構い無しに、必死に少年はマリエルを揺さぶり続けた。
「…あぁう…! はぁ…ッ!」
 頭で乳房を叩き突き上げられるその感覚に多少なりとも快感が混ざり始めてゆく。マリエルもさすがに何とかして止めなければならないとは判っていた。
 しかし、多少なりとも影魔に蝕まれているとはいえ、子供に対して強く拒絶する態度はどうしても取れなかったのである。さすがのマリエルも、どう対処しようかと困り果て―
「…私が、ユミエルお姉ちゃんに会わせてあげる…っ!」
 二人の横から一つの言葉が聞こえた。その言葉が紡がれると同時に、急速に少年の揺さぶる手が緩やかになり…止まった。
「あぁっ! はぁ…はぁ………はあぁぁ…」
 何とか揺さぶりも止まり、体を落ち着かせたマリエル。そして少々乱れてしまった息を何とか落ち着かせると、すでに声の方に向いていた少年に遅れる形で、その方へ顔を向けた。そこでは、少年と向き合ったままの少女―瞳の目が、少年の目を捉えていたのである。
「…新野、さん…?」
「お姉ちゃん…?」
「私も…これから、そのユミエルお姉ちゃんに会うの……その時に、一緒に会わせてあげる…絶対会わせる…!」
「…ほんと?」
「本当…」
 基本的に奥手な瞳にとって、必死になって言葉を早く紡いでいたのかもしれない。先程にマリエルと話したときよりもずっと早い喋りで、少年に約束の言葉を紡いだ。子供のような純真さがこめられたその眼で、少年の眼を離さぬまま… 
「………………………………やっったぁ…っ!…………っ」
 {ぱたっ}
 ようやく少年が一言、嬉しさの念を呟いた瞬間。彼の膝が地面に着き…そのままマリエルの下半身に、うなだれるようにして倒れた。
「っ!」
「っ! あなた!」
 瞳もマリエルも血相を変え、倒れそうになった少年の肩を掴む。そして真理の手によってそのまま抱きかかえられた。
「…………すぅ……すぅ……」
 眠っていた。
 ここに来るまでに一体何があったのかはわからないが、様々なことがあって必死になっていたのだろう。そして会いたい人に会えることになって、少年なりに張り詰めていた緊張の糸が切れたのかもしれない。
 何にせよ、少年は先程浮かべた喜びの顔を崩さぬままに眠りに付いていた。その安らかな寝顔に、マリエルは安堵する。
「この子…何とかしないければ…」
 あやすように抱きかかえたまま、マリエルはまだ名も聞いていないこの少年のことを思いながらこれからのことを考えていた。
 さすがにこの子を放って置くことなんて出来ない。ただでさえ、こんな子供がわけも分からぬ所に一人で迷子になっているのだ。 
 しかも微弱ながらも影魔の影響を受けている状態で。
 このまま放って置けば、いずれ影魔になってしまうかもしれないのである。その前にこの子の影を消滅させなければならない。抱きかかえたままで彼女が立ち上がる。そのまま教会のほうへ向き―
「真理さん…この子は、『私達』に任せて…行ってください」
「え…?」
 教会に向かおうとした瞬間、放たれた瞳の言葉。その言葉に、マリエルは思わず瞳の方を向く。
「…この子、悠美に会いたがってた…会わせるといったの、私だから…私がやったほうがいいと思うの…」
「でも…!」
 それは助けを求めてきた倒れている子供を置いていくことで、そんなことは出来ない。そう言おうとするマリエル。しかしそれを止めるかのように、瞳はたった一言、言葉を加えた。
「お願い、です…………『私達』を…信じて…っ!」
 そういう瞳の眼は、先程の純真で真剣な眼差しが宿っていた。
「……………新野さん…」
 しばらく向き合っていたマリエルの顔も、その言葉を境にゆっくりと和らぎ、いつもの優しい笑顔に戻っていく。
 それはまるで、必死になって前へ進もうとする娘の成長を喜ぶような『母親』の笑顔であった。
――――――――――――――――――――――――
「それで、この子を預かってきたってこと?」
「うん…あの後…教会の別室で寝かせて………本当は…この後、合わせようと思ってたんだけど……少し早く起きてきたみたい……」
「そう、だったの…」
 瞳から事情を聞き終えた恵理子は、磔のままでいるユミエルの傍らで、同じくユミエルに抱きついていた少年を見つめていた。
「お姉ちゃん…お姉ちゃん……」
 あの後、ユミエルの姿を確認した少年はその場の異常な光景など気にも留めず、ユミエルに抱きついて、曝け出されている美乳に顔をうずめていたのである。
「ママ、が……あぁんっ!」
 埋められているその顔で敏感になった乳房を刺激され、ユミエルはたまらずに甘い声を上げてしまう。
 最愛の友人達によって快楽に溺れきっていた天使も、この状況になり本来の大人しいな性格が戻っていた。しかし、先程まで弄ばれていた天使の身体は凄まじく敏感になっており、ただのじゃれ合いですら快感になってしまうのである。それでもユミエルは必死になって耐えてはいたが、その気持ち良さに嬌声をとめる事が出来ないのだ。
「でも…この子、どうして悠美のことを?」
 少年の元に歩ながら、恵理子は疑問の念を投げかける。その言葉に誰よりも早く、最も関係のあるものが答える。
「わ、私の…せい、あぁっ!」
 今だ嬌声を混じらせながら、磔天使は悲しみの混ざった声で答えた。
「……悠美…の…?」
「…わ、私…この子、知ってっっうぅん! あぁ…あのとき……の…あぁっ!……あぁっ」
「どういうこと…?」
 二人のが問い掛ける中、快感と戦いながら、ユミエルはその時の事を語り始めた…
――――――――――――――――――――――――
「お願い、その子を離してッ!」
 月夜の光すらも届かぬ闇の中。
 人通りの少ない裏路地において、ユミエルは悲痛の思いで叫んでいた。彼女の目の前の相手、イカの腕をもった一人の男と、その手につかまれている少年に向かって。
 数日前、ユミエルは影魔の気配を察知しその場所を捉えていた。
 今にも獲物を犯そうとしていた一人の男性をすんでの所で引き離し、手傷を負わせることが出来た。しかし影魔の触手に阻まれて逃がしてしまう。何とか必死に追いはしたが既に遅く、何とか見つけた頃には、小さな男の子が影魔の手に落ちていたのである。
「あ…あぁ…あぁ……」
 少年は首をつかまれたまま、恐怖に声も出なくなっている。
「おいおい、冗談だろ!? 俺がこのガキを離したら、あっという間に手前に殺されちまうぜ。そんなふざけた話が聞けるかよ!」
 もう片方の腕を切り離されたその男は、いきり立ちながら掴んだ手に力をこめる。
「があぁぁぁっ!」
 首を締められ、苦痛の悲鳴をあげる少年に、ユミエルの顔が悲痛に歪む。
「やめてっっ!」
 今にも泣きそうな程の悲痛のこもった天使の叫びが、男の手の力が抜かせた。
 そして、ユミエルはそのままに叫びつづけた。
「私が代わりになるっ! 私を好きにしていいからっ! 弄んでいいからっ! だから……だから、その子は助けてあげてっっ!!」
 戦士としては甘すぎる、しかし自身の証明であるその甘さを持って、ユミエルは少年の助命を乞うた。
「……へ! その言葉、本当かあぁっ!?」
「…えぇ! 本当よ!」
 『シュル…』
その言葉を皮切りに、天使の周りの闇から数本の、イカの腕をした触手が現れた。
 『シュルルルッ!』
 闇から現れた触手達はそのまま彼女の四股を捕らえた。そしてそのまま、捕縛した獲物を宙に吊り上げてしまう。
「っう…くぅぅぅっ! っっあぁぁぁ!?」
宙に吊り上げられたユミエルは、そのまま四股を触手のほうへ引っ張りあげられ、大の字の体制にされてしまった。
「……くっくっく、どうやら本当のようだなぁ…安心したぜ!」
 その言葉を合図として、彼の周りの影が黒い闇となって吹き上がり、アメーバ状になって彼を包み始めた…その手に人質の少年を掴んだままで。
「あぁあっ!?」
「くっくっく、心配するな。俺様は約束はちゃんと守る主義でよう…もうこいつも用済みだ! 手前ももう何もできねえようだから、このまま返してやらぁな」
「……あぁ…」
 その言葉に、ユミエルは安堵の言葉を漏らす。
 しかしすぐに警戒心を強めると共に、焦りの色が顔ににじみ始めていた。なにしろ何度も裏切ってきた影魔の約束など、完全に信じる事は出来ないのだ。
 しかし両手を触手で縛られ、その際にロザリオを落としてしまった。抵抗する手段の大半を封じられた今の状態では、彼の言葉を信じるしかないのである。
「それよりも天使様よぅ…さっきはよくもやってくれたよなぁ? 痛かったぜぇ。この借りはしっかり返しさしてもらわないとなぁ! お前、さっきの女よりもずっと綺麗だからよう…たっぷりと楽しめそうだぜっ!」
 その言葉と共に、アメーバ状の影が彼の周りから引く。そこから現れたのは、先程の彼の体格よりも一回りも大きい、巨大イカの影魔。そしてその横で、影の侵食に巻き込まれた少年が横倒れになっていた。
 彼の姿に…変化はなかった。あのまま影魔になってしまうのではないかと心が押し潰されそうになったが、どうやら心配ないようだ。
(あぁ! よかった……助かって………)
少 年の無事を見届けてほっとするユミエル。しかしその姿も、イカの巨体に覆われて見えなくなってしまう。
「くっくっく…いい様だなぁ? 天使様よう。これから俺に犯される気分はどうだい?」
「く……そんなもの、いいわけが………ぅぁあんっ!」
 反論しようとしたユミエルの言葉が甘い声に変わる。巨大イカの手とも言うべき吸盤、その二つがボディスーツに取り付き乳首を吸い始めたのだ。
「俺はこの体制から女を犯すのが大好きでよう…突き上げる時の手前の顔、想像するだけでもたまんねえんだよっ!」
「くぅ…はぁんっ! や…そ、そんな、吸い上げないっでぇ…っ!」
 ただ吸われるだけでない、捏ね繰り回されながら強弱つけて吸引されるその絶妙なやり方に、拘束天使の顔がすぐさま紅潮してゆく。
(や、やぁ……こんな、すごく上手……駄目! 流されっちゃ…あぁぁっ!)
 乳首の感度が少しずつ大きくなってゆく…ユミエルは目の前の敵だけでなく、自分の身体に目覚めた雌の本能とも翻弄されていく…
「おねえ、ちゃ…ん…」
 天使が弄ばれる中。魔の手から逃された小さな命は、目の前の光景から目が離れぬまま、意識を闇に落としていった…
――――――――――――――――――――――――
「助かっっあぁん! そう、思って…たのぉっ…でも、こんなになってっぇえ…っ! 私がっっ気付かなかった…からぁぁあっ……ごめっんな、さ…いぃぃっっ!」
 乳房、そしてその先の果肉にまで顔を摩り付けられる快感に悶えながら、ユミエルは必死に謝罪の言葉を紡ぐ。
 ―あの後、イカの影魔の持つ触手のように動き回る異形のペニスによって子宮までをも貫かれてしまい悶え狂ったが、射精する寸前に見せた一瞬の隙を突いて何とか滅ぼすにいたった。その後は、倒れていたこの少年を安全な場所につれてゆき、光の翼で傷と…恐怖に震えた記憶を消した―ハズだった。
 でもこの子は自分の事を覚えている。そして救いを求めている。
 それは自分の力が効かない、なにかによって遮断された事を意味する。ならそれは何によるものか。
 それは影の力。
 やはりこの少年はあのとき、イカ影魔の持つ「影の侵食」に飲み込まれていたのだ。それを気付いてあげられなかった…天使の心を打ちのめしているのは背徳の快感だけではなかった。
「ごめんっっな、さ…あっひぃいいぃぃっっ!」
 快感と悔恨に悶えていた磔天使の声が、不意に声高いものになる。先程まで顔を摺り寄せていた少年が、天使の持つ双丘、その果肉の片割れに吸いついてきたのである。
「ん、んぅっむちゅ、んぅむぅぅぅっっ」
 傍目で見ていた二人が気付くほどに大きな吸引音が、教会に響き渡る。
 まるで赤ん坊が母親のおっぱいを飲むように激しく、必死になって貪るように吸いつく少年。その快感は、すでに敏感になりきっている天使の身体を激しく刺激する。快感の波が全身を伝わり、ユミエルの目の前はあっという間に白い光景に包まれてゆく。
「あぁ! …あぁっ、あっ!わっ私、もっもう―」
「君!? やめなさい! なにしてるの!」
 状況に気付いた恵理子が、すぐさま少年の身体を引き離す。
「はっ! ………………僕……僕…」
 自分が何をしたのかがをわからずに、ハッとなる少年。
「っぁぁぁ……はぁ…はぁ…っ!」
 後少しで忘我の境地に追いやられそうになっていた磔天使は、再び頭を下ろしたまま息を荒げてしまう。
 そんな親友の光景を一目見た恵理子は、引き離した少年の肩に手を置きながらゆっくりと膝を地に付かせる。そのまま少年の目線にまで体を下ろし、うつむいたままの少年の顔を見つめながら語りかけた。
「君……どうしてこんな事を? 急にされたら、悠美だって困るでしょう?」
 悪戯をした子供を叱るかのように、少年を諌める恵理子。それは怒気など一欠けらも感じさせない、悲しみで覆い尽くしてくるかのような語りかけであった。
 しかし、少年は俯いたままで答えようとしない。ただ身体と共に頭を振わせている。
「……………………………」
「………………………………」
 黙ったままの少年に対し、同じように黙ったままで見つめる恵理子。まるで少年が話してくれるのを待っているかのように。
 そのまま少しして――少年は手を前に回し、何かを隠すかのように手を合わす。そして俯いたままで、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「……………ったの」
「…?」
「…………お姉ちゃんを見てると…吸いたくなるの…」
「…え?」
「お姉ちゃん、とっても綺麗で…良い匂いがして………わからないけど…ここ、痛くなって…どうしても、吸いたくなるの…」
「ここ? ……あ……」
 どこが痛いのかを聞こうとした恵理子が、俯いている少年が見ている部分に目を向け……眼鏡越しに移るその肌が赤く染まった。
 少年が手で覆っていたその場所…それは彼の股間部分。まるでなにかを引っ込めようとするかのように、股間の部分を手で隠していた。
 その部分に異変を感じる――その意味を、この場にいる三人の美女は悲しいくらいにわかっていた。
 恵理子は、隠しているようにある少年の手にその手を添え、ページを捲るようにゆっくりとその場を離した。
『あぁ……』
 瞬間、三つの美声が重なる。それと共に少女の顔が…思わず見えてしまった魔姫の麗顔が、そして天使の幼顔が紅潮する。
 少年が手を置いていた股間部分はすでに腫れ上がり、一点を中心として屹立していたのである。しかもそこはズボンの上からでもわかる程に震えていたのだ。
「お姉ちゃんの事を考える度に…大きくなって……体も痛くなって……でも考えるのがやめられなくて…どうしていいのかわらなくて……うぅん…っ!」
 恥ずかしそうに身体を振るわせながら、少年は何とか告白を続ける……
* * *
 ――この子…かなり進行してる。このままじゃ…
 告白の中、恵理子を除く二人…聖天使と魔姫はこの少年の置かれている状態がかなり危険だという事を悟った。ユミエルはかつての経験から。瞳はこの子が自分と同じなのだという事がわかって。
 恐らくは先日のイカの影魔、その影の力が少年を蝕んでいるのだ。あの侵食に巻き込まれた時によって。
 その力のせいで、天使の癒しの力は完全には届かず、記憶も残ったままになってしまった。少しの間だけだったので最初は身体に影響を及ぼす事はなかったのだろうが、影の力は次第に少年の心と身体、そして雄としての欲望に少しずつ影響していたのだ。しかもそれを解放する術を知らないために、ホースを閉められた水道のように欲望が増大していっている。この子はそんな状態に混乱し、藁にすがる思いで救いを求めていたのだ。
 その間に様々な辛い事もあっただろう。寂しい思いもしたに違いない。
 ――私が…あのとき救ってあげなかったから……確認しなかったから…この子は…
 優しき天使の心が、罪悪感で締めつけられる。自分の力不足、そして甘い認識が今、この子をこんな姿にしてしまったのだから。
 …もしこのまま放置すれば、いずれ本当に影魔となってしまうだろう。
 だが、救う手はまだ失われていない――「……それで、あの時の天使のお姉ちゃんなら…きっと何とか…してくれると思ったの…」
 そう言い終えた少年の顔が上がり、今だ十字架に磔られた聖少女のほうを向いた。
 七色の月光に照らされている天使の姿は、まるで罪人を優しく迎えるかのような神聖さを醸し出し、本当に美しかった。
「綺麗……」
「…えぇ……天使のお姉ちゃん…本当に綺麗でしょう…?」
 聖天使の十字姿に見惚れていた少年の両肩に、傍に寄ってきた瞳の手が優しく置かれる。そのまま少年の目線にまで身体を降ろし、呟きながら同じようにユミエルの方を見つめた。
「…とっても綺麗で……本当に…苛めて…食べちゃいたいくらい…」
「? 苛める……食べる…?」
 魔の姫君の言うことがわからず、少年は首をかしげる。
「…………私もね…あなたと同じ…なの…」
「え…?」
「…自分の心の中に……相手を苛めてやりたいって言う…悪い心があって……このままじゃ…悪い子のままだって……
…でもね……この天使様がね…その悪い心を……全部引きうけてくれようしているの……
……自分を苛めるさせる事で……苦しみも…痛みも…全部吸いとって、消してくれるって…
それで…私も…彼女に…悪い心を…ぶつけて………でもね、それでも彼女には気持ちよくなって欲しくて…幸せになって欲しくて…いままで、苛めていたの…
…だから……あなたも…彼女を苛める事に………うぅん、幸せにしてあげて…」
「な…瞳っ!」
 その言葉、最後の部分にはさすがの恵理子もギョッとなって瞳に寄った。
「貴女…! いくらなんでも、こんな子に―」
「――影魔は…………うぅん……この子は…私よりなんかより…ずっと、危険な状態………このまま、『欲望』を吐き出させないと………本当の…影魔になっちゃう………
それに……欲望の対象が…悠美なら……今、参加させる…ほうが…いいと思うの……」
「で、でも…!」
 わかっている。状態からしてこの少年が影魔になるかもしれない事…この子を放っては置けない事を。そしてそれを回避する方法を、自分よりも彼女や悠美のほうがよく知っている事を。
 それでも道徳的に考えるなら……こんな年端もいかない男の子に、こんな破廉恥な行為に参加させて良いのか。それに結果的にとはいえ、これ以上悠美を踏み躙らせる者を増やしたくはない。
 その葛藤する心が、どうしても少年を行為に加わらせるのをためらわせるのだ。
「……恵理、子……くっ……新…野……さ……はぁぁ……っ!」
 不意に聞こえてきた声。その声に三人はハッとなって、声のする方を向く。
 そこでは、今だに磔られている聖少女が身体を振るわせながらも、じっとこちらを見つめていた。
 真っ赤になり震えている幼顔。しかし先程とは違う、光を宿した眼を目撃したときに恵理子、そして瞳も彼女の意思が伝わった。
 ――私は、いい……どんなに苛められても…それより、その子を助けたいの…!
 まだ完全に快感に溺れていないその眼には、少年の事――これから更に汚される運命を受け入れる覚悟が出来ていたのだ。
 先程からもう何度も魔悦の快感に溺れ、絶頂地獄に溺れ、そして今なお少年の乳首吸引によって再び身体が快感に支配されぬいているというのに。
 事実、無関係な男の子が加わった事…そして先程までの痴態に、少女の顔も体も羞恥と快感で悶えているようだった。あるいはそれは、先程に親友の甘い快感に負けて、成すべき事を捨てて溺れた自分に罰を与え様としているのかもしれない。
 それでも必死になって自分たちを見る聖少女に、恵理子も瞳も彼女の意思を受け止めた。そして意を決したかのように、再び少年のほうに向き直った恵理子は、まだ誰も聞いていなかった少年の名を問うた。
「……君、名前は?」
「……僕は………巻幸(まきよし)」
「巻幸君…今からあの子が…うぅん、私達皆であなたを苦しみから助けてあげる」
「え………うん」
「でも聞いて…いまからやることは、本当はとっても恥ずかしい事なの。人前では絶対に出来ないほどに…
特に女の子にはとっても恥ずかしくて…本当に好きな人以外には恥ずかしくて出来ない事…
君にはまだ早すぎるし、もし自分を好きになってくれなかったり、好きでもない子にされたら、ただ辛いだけじゃなく、回りからも嫌われて……
本当にお互いが好きになった者同士だけが、互いに気持ちよくなって、嬉しくなって、幸せになれることなの……
だから君がもっと大きくなって、本当に好きな人と互いにめぐり合うまでは…こんな事しちゃ駄目。
それと…このことは、絶対に他の人にはしゃべっちゃ駄目。皆が悲しんじゃうから…………
これは私達の約束………うぅん、お願い…ね?」
「…………………………………………うん。わかった…」
 まるで母親に諭されているかのような恵理子の言葉に、欲情に捕らわれ始めているはずの少年が素直に答えた。このように相手を諭し、相手を安らかにできるのは彼女のもつ『人徳』なのだろう。
「……じゃ、まず…女の子の身体………ちゃんとわからないと…ね……」
 恵理子の言葉を巻幸の横で聞き終えた瞳が、行動を始めるよう促した。
「…?」
「…女の子って…身体はとても繊細で………本当に痛んだり…壊れやすいの……だから、優しくしてあげないと……今はただでさえ、苛めている状態だから…………」
「…うん、そうだね。いくら私達が望んでやったといっても…これは女の子には辛いものだから…」
互いに言葉を交わす親友の二人に、少年は言葉を投げかけた。
「…それって、ユミエルお姉ちゃんがあそこに裸で縛られている事…?」
「そう。そしてこれから…そのユミエルお姉ちゃんの身体を……触ったり、舐めたりしてあげるの……
そんな時、無理に強くしたりすると痛がって嫌がるでしょう…?
それに…女の人の身体は……気持ち良くなる所が……人によって…違ったりするから……」
「そう、なんだ……」
「うん。だからせめて気持ち良くしてあげる方法は覚えておいたほうがいいの…きっと君のその悪い病気をとるのにも役立つから。
それじゃぁ…まず、女の人の胸のことはわかるよね?」
 そう言いながら恵理子は、磔られている親友の晒された身体を使って少年に簡単な説明を始める――
「…あぁ…っ! くぅぅ…んぅぅぅぅっっ……っ!」
 恵理子達の「お勉強」が進む中、今のユミエルの心は複雑な状態にあった。
 確かに目の前の少年…巻幸君を救いたい。それで自らの身体が汚されるのは構わなかった。元々自分は、こんな恥知らずな姿をして、それで感じて悦んでいる変態なのだから。でも…
 ――駄目……やっぱり、恥ずかしいよぉぉ…
 やはりこの磔られた今の姿を、異性…しかもこんな子供に晒すのは、どこかに消えてしまいたいくらいに恥ずかしかった。
 いくら身体は敏感に反応してしまうとはいえ…本来純真な少女である悠美にとって、性に関する事に関わる事全てが恥ずかしい行為なのだ。しかも今は自分の…いや、女の子の恥ずかしい部分を曝け出している状態なのだ。親友達の陵辱でさえとっても恥ずかしい思いだったのに、男の子まで混ざって体を隅々まで見られるのは…
 しかも、初めて見るからなのか…女性としての部分に、男の子の視線が釘付けになっているのだ。もう心臓の音が聞こえてきそうなくらいに、聖少女の羞恥は高まっていた。
 しかも先程まで、親友の二人に恥辱の磔の上で、身体を発情させる魔力を常に注がれながら、徹底的に身体を弄ばれたのだ。苛められた身体は凄まじく敏感になっており、視線を感じるだけでも顔は思いきり紅潮し、身体と共に背中の翼も震える。前向きに突き出されているCカップの美乳の先端はこれ以上にないくらいにぴんっと勃ち、もっとも羞恥を煽られるデルタ部分からは恥知らずな蜜が再び溢れ出てきている。
 それくらいに身体が感じてきている…マゾヒステックな快感が身体を襲っているのだ。
 今のユミエルは、こんな小さな子供の視線――いや、もう視姦と言ってもいいかもしれない――そんな行為にすら素直に反応してしまう雌犬の状態でもあった。
 ――やぁぁぁ…っ! そんな、釘付けるように…見ないでぇぇぇ…っ!
 今度は自分の戦いから逃げない…そう決意したはずの心が今にも挫けそうになる。
 もう少年の視線は、一番恥ずかしい部分に集中している。「わぁぁ…」という驚きと興味の含まれた声と共にそこから釘付けになって離れない。それだけでもう…その部分を弄ばれているかのような快感に晒され、磔天使は悶えてしまう。
 ――んぅぅ…駄目…こんなので…感じて………気持ち良くなって……
「あぁ…気持ち…ィィ…こんなのって…………っっ! ―――い、ひぁぁぁぁぁっっ!」
 途端に磔天使の嬌声が高まり、その場に響く。同時に、聖天使の身体が震え出す…それと同時に全身を何かから逃げるかのように全身、特に下半身の方がくねりだし始めた。
 ――やぁぁ……気持ち、いいっっ…! これ……これってぇぇぇ…っ!
 不意に全身を襲ってきた感覚。その感覚はユミエルにはすぐに判断がついた。思わず自分を見つめているうちの一人…魔姫の方を向く。
 魔姫の額、目の形をしたサークレットが光り始めていた。瞳の淫魔力が聖天使の身体を蝕み始めたのだ。以前のような力は全くなくなっていたが、それでも女性を少しずつ発情させてしまう力はある。しかも今の極度に身体が敏感になっている聖少女にとっては…
「うくぅぅぅぅっっ! や、やぁ……から…からだがぁぁっっ! あは、くあぁぁぁん…っ!」
* * *
「! ど、どうしたの!? お姉ちゃん、急に苦しみ出したよ!?」
 未知な世界に興味深深だった巻幸も、さすがの異変に驚いた。そのまま後ろのほうを振り向く。
 恵理子もそれに対して驚くが、その原因を瞬時に悟り、言葉をとどめた。瞳がその答えを言おうとしていた事がわかったからだ。
「大丈夫…。今…あのお姉ちゃんは…気持ち良くなっているところだから…」
「…え? 気持ち良く…?」
「私の『悪い力』でね……今…ユミエルお姉ちゃんは……その力を…吸い取ってくれる変わりに…気持ち良くなってくれているの……。でも、気分が悪いとか…そんなのじゃないから…大丈夫……」
「………そう…なの…?」
「うん……。だから、安心して彼女の事を見ててあげて……このまま見てあげることが…今は彼女にとって…大事な事だから……」
「…うん、わかった」
 確かに嘘は言っていない…しかし完全に本当の事ではない。深く考えれば府に落ちない回答である。しかし、巻幸はその言葉を素直に受け止め、再び磔天使の方を向く。そのまま彼女をずっと見つづけていた。
 その子供の説得を終えた魔姫は、眼鏡の少女のほうを向く。そのまま―
「…ごめんね…」
 そう一言呟き、再び磔天使の身体を視線で嘗め回し始めた。
 ―その巧みな言葉で少年を騙した事を誤っているのか、それとも磔ている親友に対し体よく弄んでいる事に対して謝っているのか…いずれにせよ、恵理子にとっては悲しいことであった。
 それと同時にこの現状から、彼女達の苦しみを少しでも和らげる方法を頭の中で模索しながら、親友の苦しみを一緒に味わうために、堅実な目で彼女を見据えた――
* * *
 気持ち良い――再び、ユミエルの心に魔悦の快感が全身を蝕んでいた。
 特に双丘の先端や、愛蜜を流している肉唇…その先にあるクリトリスといった部分は、まるで直接触られ潰されているような感覚を受ける。そして、それが甘くて激しい痺れとなって身体を刺激する。魔悦の快感が付加されたその視姦に、ユミエルはまるでなにかに操られるかのように悶え続けていた。
「あひぃぃぃ…っっ! …くぅぅぅっ! あぁぁぁあっっだ、だめっっ! 私、狂っちゃ――っいひぃぃぃっっ!」
 身体に思わず力を入れた途端――お尻のほうから激しい痺れが襲い、ユミエルは悶絶する。今だに菊門を埋め尽くしているロザリオ、その聖なる十字架が再び自らの中で蠢き始めてたのだ。再び自らの尊厳を汚す行為に悶える磔天使。しかし――それを蝕み汚すはずの手は、今ここにはない。
 ――やぁぁ…! わ、私…食べちゃってる……自分で…ママを…こすらせてるぅぅぅ……っっ!
 ユミエルは今、その正義の証を自ら銜え込んで悶えこんでいるのだ。しかも淫魔力に弄ばれて極度に敏感なった身体にとっては、一度力を入れてしまった白桃の反応を止めることなど出来なかった。
 一度火が付いたそれに連鎖するかのように菊門も、肛内も意思を持ったように蠢いてしまい、既に奥底まで銜え込んでいた三又の槍を更に貪ろうと締めつけ擦る。そこからもたらされる激しい痺れと痒痛に、細腰がくねってしまうのが止まらない。恥知らずな肛内が火照った十字架を奥底まで銜え込んで締めつけるたび、脳まで届いてくる衝撃がたまらなくて、下半身がくねくねと動いてしまう。その快感に、直接触れられていない筈の前の穴からは、既に太股を満たすほどに恥蜜が溢れていた。
「ひぁぁっ! …あぁっはぁはぅぅんっっ! くっっはぁぁぁぁぁっっ! っあぁぁぁぁっっ!」
 人肌に触れられていないはずの身体――耳の先から足のつま先、そして秘部や腸にまで襲ってくる被虐の快美に、淫乱天使は光翼を悶えさせながら乱れ狂う。
 前からは六つの眼からくる視姦。後ろは銀色の無機物による虚空からのアナルファック。自らで自らさえも辱める恥知らずな痴態が続く中――ユミエルは、不意に子宮からくる波に気付いた。
 ――…う、嘘…っ! 私…イ…イク…っ…! こんなっっ見られ、てぇぇぇ………っっ! やぁぁぁぁ……っっ!
 押し寄せてくる絶頂の波を抑えようと、必死に身体に力を入れようとする磔天使。しかし一度生まれた波を抑える事が不可能なのは、悲しいくらいに理解していた。子宮と肛内、そこからおなかを通して駆け上がる。それにつられるように、くねる身体が震え、目の前を真っ白に染めていく。
「は、やぁぁぁっっ! だっだめっ! わたしっ見られて―――っイッちゃ……いあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
 教会に響き渡る嬌声と共に、磔天使の幼い上顎が上がる。それと同時に全身が――四股も、双丘も、そして背中の翼も激しく震える。ひくひくと震える肉唇からは愛液が噴出して、太股や…既に水溜りとなっている愛液の地面を満たす。そして菊門を貫いている十字架を痛いくらいに締め上げる。
 十字磔の姿で震える天使の姿はなんともイヤらしく、そして美しかった。
「っっはぁぁぁぁっ……っ!………はぁ…はぁ…はぁ……あぁあ………あぁ……っ」
 絶頂の波が覚めやらぬまま、ユミエルは上げていた頭を垂らした。同時に天使の象徴たる翼も同じように項垂れ、口の閉じぬままに息を荒げる。次第に息が整っていくうち…羞恥と悔恨が沸きあがってくる。
* * *
 ――…わ、私………イッちゃった……見られて…見られて………
 もうどこかに消えてしまいたいくらいに恥ずかしかった。いくら淫魔力に弄ばれ、身体が極度に敏感になっていたとはいえ…ただ視線を全身に浴びるだけでヨガリ狂い、挙句に絶頂に達してしまった。しかも、いつものように男性が向けてくる欲情の視線ではなく、好奇心や想いのこもった視線によって。
 親友だけでない…年端もいかない子供の視線すら快感に変えて貪り、自らの証を自ら汚しながら悶えたのだ。
 無論、宣言して身体を震わせたのだから、恵理子達にその痴態がばれていない訳がない。こんなふうに歓喜を極めた自分を見られてしまったのは違いない……
 ――や、やだ……これじゃ…顔を合わせられない、よぅ………
 もう…どうしようもなく救いようのない自分の変態ぶりに、磔少女は沸き上がる羞恥…そして火照った頬に感じる冷たい雫が止まらない―
「お姉ちゃん……大丈夫?」
 不意に聞こえたその言葉に、ユミエルはハッとなる。そのまま声のほうを向いた。
 羞恥に悶えていた間にだろうか…すでに傍に来ていた巻幸が、心配そうに天使の顔を見つめていた。
「……悪い力、取れた? 気持ち良くなってくれた…? それとも……やっぱり辛いだけ、だったの……?」
 不安そうな顔で尋ねてくる巻幸。自分のしていることが本当に、大好きなお姉ちゃんの為になっているのかどうかで心配なのだろう。
 ――……駄目! この子を、不安がらせちゃ……こんなに、想ってくれてるのに…!
 なんて自分は情けないのだろう。自分の愚かさを嘆く事にまた逃げようとして、この子に心配をかけさせてしまったのだ。
 今でもなお、こうやって見つめられるのはとても辛くて恥ずかしい。だが欲情ではない、真剣な眼差しをしているその子を裏切るようなことはしたくなかった――聖少女は必死になって、ぎこちないが優しい微笑みを向けた。
「…うん……大丈夫。あなたが…皆が、想ってくれたから…また悪い力がとれたよ。気持ち良くなれた…」
「……それこそ……イッちゃうくらいに………?」
 横槍に入れてきた瞳の言葉に、ユミエルは再びハッとなる。そのまま頬を紅潮させて俯いてしまった。
 ――やあぁ…新野さん……そんな事、言わないで…
 無論絶頂に達してしまった事を気付かれてもおかしくはない。だがそのことをわざわざ説明することに、ユミエルは彼女の意地の悪さを感じた。恐らくは自分を辱める意味合いも含まれているのだろう。
「イッちゃう……?」
「……人が…最高に気持ち良くなるときのこと……さっき、ユミエルお姉ちゃん…身体を激しく…震わせていたでしょう…? あれの事……」
「……そう、なんだ…………良かった!」
 瞳の言葉を聞き終えて巻幸は安堵の溜息を漏らした。そしてそのまま磔天使に抱きついた。
「辛そうにしてたから、どうなっちゃったのかと思って心配だったの……よかった………」
 偽りのない仕草を見て、恥ずかしさに俯いていたユミエルも安堵の表情に変わってゆく。先程のぎこちないものではなく、安らかな微笑みに。
 ――この子、私のことをこんなにも………。嬉しい……
 先程からの羞恥心は今だに高ぶっているままだが、この少年を救いたいという想いがそれ以上の喜びを与えてくれる。そしてその喜びの思いが、先程から流れる冷たい雫を暖かく感じさせてくれた。
 そのままふと顔を見上げる少女天使――そこでは、恵理子が少しご立腹の表情をしていた。その表情が瞳に向けられている事に、ユミエルは先程自分を辱めた事を責めてくれていることに、嬉しさと…責められている事の悲しさを感じ――
「――うぅうっ!」
 次の瞬間、巻幸の声が響き渡る。そして磔天使に抱き着いていた身体がずり落ち、そのまま震えだす。
『っ! 大丈夫っ!?』
「…あ…うん…大丈………うぅっ…!」
 ユミエルと恵理子が一緒に掛けた声に、巻幸は何とか反応したがその小さな身体の震えは止まらない。まるで何かに耐えているかのようだ。
「……全然、大丈夫じゃない……」
 そういって瞳は巻幸の身体を両腕に包み、立たせるようにして抱きかかえる――ズボン越しに屹立していた、彼の股間部分を磔天使に向けるような形で。
 先程の磔天使の痴態を見たためであろうか、股間で腫れ上がっているそれは、少年の意志とは裏腹に脈動を続けていたのである。
「…だって……ユミエルお姉ちゃんを、心配させたく……うぁあん…っ!」
 満足に言葉を続けさせることの出来ずに俯き、我慢するかのように震える巻幸。それだけ今の彼の淫茎は敏感のようである。下着の中で擦れるだけでも彼にとっては強い刺激なのだ。
「もう十分心配させてるよ……ほら、ユミエルお姉ちゃんもあんなに…」
 傍に現れそう囁いた恵理子に、巻幸は「え?」と驚いたような表情で顔を上げた。
 そして彼の見たもの……磔られた聖天使の表情は、悲哀に満ち溢れていた。様々な感情は混ざっていたものの、純粋に彼の事を心配している眼でその少年は見つめられていたのである。
「……ごめん、なさい。ごめんなさい……ごめんなさい………」
 その眼で見つめられ、少年は隠し事がばれた事を恥じるかのように再び俯き、涙を流しながら謝りだした。大好きな天使様を悲しませた事が、弱っていた心を打ちのめしたのであろう。
 しかし―
「……ごめ――わぁっ!」
 その謝罪を止めるかのように、巻幸を支えていた魔姫が持ち上げるようにして抱きかかえ直した。いきなり抱き上げられたことに驚き、そのまま呆けた顔をしたままになる巻幸。それを掴んだまま、彼の股間にまで顔を降ろしながら瞳が呟く。
「……謝って…何とかなるものでも…ない。それより…こっちを…何とかする事が……大事………」
 そう呟く瞳の手がゆっくりと、屹立した彼の股間に伸びる。
「ちょ…瞳…! いきなり、そんな……!」
 ゆっくりにではあるが、躊躇なく少年のモノに手を伸ばす瞳。さすがにその行為を止めに入ろうと、恵理子はその手を掴んだ。
「……そろそろ本格的に…やってもいいと…思うけど…………」
「いや、そうじゃなくて…その……………もっと…恥じらい……というものを……」
「……以前、藤堂達に……された事と比べたら……………この程度の事……なんとも……」
「…え? ……あ………」
 その言葉に、恵理子は言葉が詰まる。同時に胸が締めつけられる思いがした。
――瞳はかつて独りぼっちの頃、不良の集団である東堂達に虐めを受けていた。その際に身体を弄ばれたことも、そしてこんな風に淫茎を奉仕相手にさせられたのではないか。そう考えるだけで恵理子の心は痛む。
「……それに……恵理子に、うまく出来ると…思えない………ここは、私の出番……」
 立て続けの言葉に、恵理子の手の力が抜けていく。紫色の含まれた手が、拘束していた肌から離れてゆく。そして拘束から離れた瞳の手は、再び彼のズボンのチャックに添えられる。そのままジッパーをゆっくりと降ろし始めた。
「…うぅぅ…あぅぅ…っ!」
 ジッパーを下ろす途中股間の淫茎を刺激しているらしく、巻幸は苦悶の悲鳴を上げてしまう。瞳はそれを聞き流しながら、ゆっくりと最下部にまで降ろした。そのまま止めを外し、所々に破れているズボンを下ろした。
『あぁ…!』
 再び三人の声が共感する。ズボンの下から現れたブリーフの前部分は勃起した肉根の先端によって引っ張られており、既にねっとりとした先走りの汁によって濡れ光っていた。しかも、三人が驚いたのはそれだけではない。屹立している少年の男根は、既に歳相応のものではないほどに肥大している事が、ブリーフの上からでもわかったからだ。
 その光景にユミエルも恵理子も、流石の瞳もその白い肌が赤く染まってゆく。やはり、男根を前にする羞恥心は隠せないようだ。
 紅潮しながらも、なんとか心の動揺を抑えた魔姫は、そのブリーフの中に片方の手を入れ男根に手を添える。
「ひゃうっ! あぁぁぁぁ…っ」
 敏感になっている部分を触れられ、巻幸は思わず声を上げてしまう。
(…あれ? この感覚……)
 動かすために手に取った肉棒に感じた――吸いつかれるような違和感に、瞳は思わず手を止めてしまう。しかしすぐさまその手を動かし、もう片方の手でブリーフの前部分を引っ張り、そのまま下に降ろした。
「あぅぅっっ!」
 その反動で一気に少年のペニスが反り立つ。悲鳴と共に彼自身の股間の凶器がその姿を現した。
「な…っ! これ……!」
 現れた肉根の姿に、声を漏らした恵理子も、他の二人もまた羞恥よりも先に驚愕に震えた。

 

 

戻る

TOP