騎翔天使メイ外伝 〜堕天への誘い〜

<3>

「あっ……ひぃっ……ふぁぁ……」
 古びたホテルの一室。キングサイズのベッドの上で休み無く淫らな水音と熱く濡れた艶声が響く。
 初めてこの男にイカされてからどのくらいの時間が経ったのだろう? 押し寄せる快美の波に延々と曝されながらメイはぼんやりとはっきりしない意識で考えた。
「ひぅっ……あふぁ……も、もうやめ……てくださ……あぁああぁあぁっっ!!」
 そうしている間も媚薬に蕩けきり、快楽に溺れきった身体は勝手に高まっていく。エンジェルの懇願の言葉は一際激しくなる水音に無情にも遮られ、自らの上げる浅ましい嬌声の中に弾けて消えた。膝上まで覆う白のロングブーツを履いた左足は今、男の手によって高々と抱え上げられ、広く開かされた両脚は小刻みに痙攣している。深いスリットの入った白のドレススカートの中で普段は人の目が決して触れない女性の秘奥を隠す下着が無様に曝されているがその恥ずかしい姿勢に恥らう余裕さえ今のメイには無かった。
「やれやれ……まだそんな事言ってるのかい? メイちゃんの体はもうすっかり俺の指を歓迎してるのにねぇ」
「ち、違います。ひぅっ……そ、そんな事……あ、ああっ……ない……ですぅ〜……くうううううっ!」
 シックな黒のショーツの中へと既に差し込まれている指の数は3本に増えており、盛んに天使の秘奥を責めている。規格外のデスパイアの巨根さえ受け入れた事さえある淫裂にはその程度で痛苦は無い。むしろ甘美な悦楽を盛んに送り込んでくれる愛しい指を嬉々として咥え込み、卑しい涎をたらしてお代わりさえ要求していた。そんな無言の要求に応え、快楽の紡ぎ手はメイの中で巧みに蠢く。中で擦れ合い、入れ替わるように出入りを繰り返し、複雑な秘奥の隅々までまさぐりながら、弱所を探り当てると執拗にそして徹底的にそこを可愛がった。
「ひぃ、あ、あぁぁっ! そ、そんな嫌らしい音ぉ……ひうっ……立てないで下さいぃ……は、恥ずかし……くぅ〜〜っ!」
――――私……私、嫌なのに……は、恥ずかしいのに……悔しいのに……なのに何でですか……? 何で私こんなに……感じて……
 浅ましい自身の肉体反応に戸惑い、懊悩する生真面目な天使に対し男の責めは一切の容赦がない。
 緩急さえ計算し尽くされた卓越した指の動きは、人間の男を知らないメイの体に鮮烈な快楽を無尽蔵に送り込み、体の芯まで蕩けるような甘美な快楽の美酒に天使の体と心を何処までも酔わせていった。快楽と喜悦のスキップを踏みながら絶頂と言う頂を目指して駆け上がっていく肉体は、最早天使の拒絶も静止も受け付けず、幾度目かわからない目映いばかりの頂点が固く閉じられた眼瞼の裏に映る。
「ほれほれ……素直になっちまいなって、気持ちいいんだろ? また俺にイカされたいんだろ?」
「あ、ああっ……くぅぅっ……ち、違います〜。私はそんな……そんな事ぉ〜〜っ!? いひぅっ!? や、やめてぇぇえぇぇ〜〜〜〜っっ!!」
 快楽に蕩けた美貌がそれでも必死に天使としての矜持と誇りに縋り、自分を辱める男を睨もうとした。
なのに、男がショーツの隙間に差し込んだ指を激しく抜き差しすると必死の否定の叫びが、エッチな肯定の嬌声に変わってしまう。濡れ弛みきった浅ましい恥裂はますます嬉しげにその指を咥え込み、与えられる快楽を甘受し滂沱の涙を次々と零し、とっくにショーツが吸収しきれなくなっている恥涙が飛沫となってシーツの上に飛び散った。
 既に天使の言葉は何の力も意味も持たない……どんな言葉よりも自分のはしたない肉体が如実に答えを返してしまっているのだから……
「あ、あくぅっ! ひああぁっ!!……私……わたしぃ……また……またぁ〜〜〜〜っ!?」
 横向きに伏したメイがベッドシーツを白いグローブに包まれた細腕できつく握り締め、身悶えながら泣き叫んだ。
 ナイトエンジェルの聖衣を纏ったまま、護るべき人間に無様に屈服させられる自分。真性天使であるにも関わらず幾度もデスパイアに敗北を喫した自分の弱さをこんな形でまで突きつけられる。
――――また……またです。またイカされてしまいます。こんな人に……こんな人の指なんかに……でも、でもぉ……
 同時に胸の内から湧き上がるのは飢餓感にも似た強い欲求と期待感。今度は今度こそは……きっと……きっと……
「い、イクぅ〜〜〜ッ……わ、わたし……わたしぃ……またイク……ッ! イッちゃいぃ〜〜〜〜……・っ!」
 今度こそ……メイの頭の片隅に浮かんだ浅ましい欲求は、しかしあっさりと裏切られ、最早幾度目か解らない絶頂の寸前に、男は指の動きを止めた。
「あ、ああっ!? そ、そんな……っぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!」
 ビクッ……ビクッ……
 それでも絶頂の階段を駆け足で上っていたメイの身体は止まらない。失速し、勢いこそ弱まったもののメイの身体は限界へと達し、身体をビクビクと小刻みに震わせた。だがそんな中途半端な絶頂に天使の肉体は盛んに不満を漏らす。一度その身に味合わされた至悦の極みが欲しい。あの快楽の頂点をもう一度……と何度目か解らない声無き肉体の不満の叫びが体内に木霊する。
「はぁ……はぁ……ふぅ……くぅっ……」
――――ま、また……こうやって……くぅッ……どうして……ッ?
 奥歯が軋むほど歯を噛み締め、メイは体の芯でひたすらに燻るやるせない欲求を持て余し身を捩る。
 先ほどからずっとこうだ。もう幾度目か思い出すことも出来ない。無理矢理に絶頂を強制され、羞恥と屈辱の中、快楽へと誘う癖に男は決して極めさせない。最初に経験した鮮烈な歓喜の……至悦の境地に連れて行ってもらえない。中途半端な絶頂を幾度も幾度も強制され、騎翔天使の身体は燻る絶頂への渇きを抑え切れなくなっていた。
「ふぅ……ふぅ……う、くぅ……っ」
 涙を浮かべ切ない吐息を漏らし、自分を嬲り続ける男を潤んだ瞳が横目で睨む。
 ――――切ないです……辛いんです……こ、こんな……こんな事が続いたら私……私もう……
「へへへ……どうしたんだい? そんなに物欲しそうに俺なんか見つめちゃって……どうして欲しいか言ってくれなきゃわかんないぜ?」
 指に付いたメイの恥ずかしい蜜を見せ付けるように舐め取りながら男が意地悪げにほくそ笑んだ。
 その笑顔が無性に悔しい。そう、こんなにも自分を追い詰める男の真意など一つしかない……解り切っていた。淫らな要求を言わせたいのだ。自分に……浅ましく求めさせたいのだ。解っている……解っているのに……どうにも出来ない。無言で唇を噛み締める屈辱に涙する天使の態度に男は呆れたようにため息を付いた。
「ほんと強情な天使様だな。こっちのお口はこんなに素直なのになぁ〜。これも一種のツンデレって奴かい?」
「くっ……あ、貴方は最低ですっ! か、勝手な事ばかり言わないでくださ……っくぁあああああああああぁっ!!」
 決死の拒絶と罵倒の言葉さえあまりに無力だった。
 燻り続ける欲望の業火と中途半端な快楽の余韻に煽られ続ける肉体は指がまた動き始めただけで素直じゃない上のお口をさっさと閉じさせる。虚偽に塗れた言葉は虚しく弾け、素直な甘い囀りの中に呆気なく消えた。
「い、いやぁ……もういやです……私……おかしく……おかしくなってしまいますぅっ!……やめ……ってぇぇぇっ!!」
 ひときわ高い水音とともに中を掻き混ぜ可愛がられると勇ましい罵倒は、あっさりと悲痛な懇願に変わった。
 イカされたばかりの、そしてイカされ続けた天使の体は泣きたくなるほど従順に快楽に従い、馬鹿みたいに簡単に高まっていく。足掻き、反抗し続ける心と反比例するように体は加速的に素直になっていった。絡みつく様に男の指を咥え込み、メイの意を受けつけない腰は自ら更なる快楽を求め、淫らに舞い踊り出していく。
――――私の身体……なんで……なんでこんなに嫌らしいんですか? 私なんで……こんなに弱いんですか〜?
 男に良いように上げさせられる自分の浅ましい鳴き声が悔しくて……男に弄ばれる卑しい肉体の反応が悲しくて……琥珀の瞳からまた銀の雫が零れ落ち、涙の跡の消えない頬を濡らす。悔しさに泣いても、恥ずかしさに目を瞑っても、高く甘く舞い歌わされる天使の歌姫の淫声(うたごえ)は止まらない。
「ほらほら……どんどん溢れて来るぞ・・・そら、こっちのお豆さんでも、また可愛がってあげようかな?」
「ひっ、やっ、やはあっ、そこ……そこもう……っ! ひぃあぁっ……ゆ、許して……許してください〜〜〜っ!!!」
 また……また来る。淫らに開発され尽くした自分の体の最大急所に……無様に泣かされ、浅ましく鳴かされる文字通りメイの一番の泣き所に来る。来てしまう。背筋の凍るほどの恐怖に怯える無力な騎士。胸がときめくほどの期待にうち震えている淫らな天使。そう、どれほど身を捩ろうと、折れるほど背中を反らそうと、必死に首を振ろうと、逃れる術はない……だから仕方ないと、胸の内で虚しい言い訳を叫ぶ。
「へぇ……そうかい? じゃあ止めた」
「……っ、え、ええ……っ!?」
 なのに、甘い雫に濡れ、艶やかな桜色に輝く極限の快楽点に触れる寸前、男の指はあっさりとその拒絶を受け入れた。
 遠ざかっていく指に思わず上がる驚愕と当惑の声。自分自身が拒絶したのに……もし触れられていれば淫らに狂わされる事が解りきっていたのに……その言葉の中に宿る明らかな落胆の色を隠せずメイは狼狽した。
――――わ、私、何を?……ち、違う……っそうです。これでいいんです。けど……だけど……また身体が……くぅっ
 切ない疼きが止まらない。肉体の芯から溢れる熱が、渇きが、収まってくれない。
 敏感お豆をその指で小突かれたい。桜色の真珠を包皮のうちから摘みだして優しく可愛がって欲しい……切ない肉体の要求の声が消えてくれない。浅ましくもおぞましい快楽への飢餓感が収まらない。
「ふぅっ……ふぅっ……くぅぅっ……」
 ジリジリと内から焦がされる狂おしいほどの渇きに喉を鳴らす。
 開かされた脚の間で腰がアソコがピクピク動いているのが見なくても解った。ショーツ越しに男の熱い視線を感じ、そんな視姦行為にさえ、浅ましい身体はジンワリと熱い雫が溢れ出す。
――――く、苦……しいんです。こんなの……て……こんなのってないです……
 胸の内で腰の奥で燻る焦燥にメイの肉体も心も限界に来ていた。
 必死にかみ締めたシーツは涙と唾液に、そしてなにより浅ましい愛液に変色するほどに塗れている。自分が流している涙が嬲られ続ける悔しさからなのか。可愛がってもらえない悲しさなのか……もうメイいはわからない。
「う〜〜ん……やり過ぎたか……ま、そろそろ苛めるのもかわいそうだしねぇ、イカせてあげようかい?」
 そんな嫌らしくも図々しい男の囁きにさえこの体は期待する。ひょっとして……もしかして……今度こそ、と。
 こんなのは嫌だ。こんなはしたない自分の恥部を突きつけられるのは……これまでデスパイアに責め嬲られ、イキ果てる中で幾度となく想像もできない恥辱を味合わされた事はあった。それでも、異形のデスパイアの超常の力に屈したからだと、おぞましい魔物の、人外の魔悦に抗いきる事が出来ないからだと何処か諦めた自分への言い訳が出来た。けれど……これは……
「…………っぅ! す、好きに……してください……っ!!」
 シーツに浅ましい表情を隠すように顔を埋め、涙声で叫ぶ言葉。その言葉のなんと白々しく虚しい事か?
 もはや飢え乾ききった心では快楽への拒絶も罵倒の言葉も紡げない。消極的な要求とさえ取れる……今更言い繕いは止めよう。誰が耳にしても求めてしまっている欲情した声。
「あれ〜? ひょっとしてまたお預けが欲しいのかな?」
「ぁ……っっ!」
 ビクリ……
 男のふざけた言葉に冷たい恐怖が背筋を震わせる。
 またあの地獄を強要される……?
 でも……でも……でも……っ!! 
 ギリリ……引き千切らんばかりに涙に濡れたシーツを握り締めた。デスパイアとの陵辱において幾度か味わった絶望にも似た狂おしいほどの悩乱と懊悩に身も心も灼かれてしまう。
「ククク……冗談だよ。そんなに怯えなくてもちゃんとイカせてあげるから……」
 男の嘲るような笑いを浮かべ、男の手でスカートの上からお尻を撫でられ、背筋が思わず震えた。
 浅ましい心の内を見透かされている事を否応なく突きつけられ、屈辱に焦がされながらも、泣きたくなるほど欲情した体は淫らな期待に熱く燃えはじめる。
「じゃあ……そろそろ……」
 尻を撫でていた男の手が恥辱と焦燥を煽るように、ゆっくりとスリットの隙間から足の間に潜り込んできた。
 屈辱や嫌悪、それ以上に身の内を焦がす焦燥感に身体は勝手に反応し、腰の奥からジュンと熱いモノが溢れショーツを濡らす。来る……きっと……ギュッとシーツを握り締めた。
「・……え?」
 小さな呟きとともにメイの身体がビクンと反応しすくむ。
 戸惑いと困惑の声。想像していた所と……期待していた所と其処は違う。ショーツの後ろから侵入した指の触れた場所……しわの寄った後ろの蕾は、緊張のあまりぎゅっと縮み上がっている。ゆっくりと男の指の腹が、不浄の穴とも思えない綺麗な桜色に色づく蕾の縁の部分をくすぐるように撫でた。
「あっ! や、やあっ!?……そ、そこ……違っ……あ、あぅぅっ!?」
 戸惑いと驚きの入り混じったメイの悲鳴が立て続けに上がり、腰が勢いよく跳ね上がる。
「違わないさ? さっき言ってたよな。ここも経験あるんだろ?」
 クククッ……低く喉を鳴らし、意地悪げに爪先で懊悩する天使の柔らかく盛り上がった蕾の淵を引っ掻いた。
「んあぁぁっ!? そ、そんなぁぁ……っ!?」
 迸る鋭い刺激にメイの体が海老のように反り上がり、激しく痙攣する。
 男の言葉どおり、長き戦いの間にソコを貫かれた事は幾度もある。最近などは寄生型のデスパイアに無数の線虫を送り込まれ、小腸の奥まで犯し抜かれた。だが、どれほど犯されようと穢されようとそこは排泄のための不浄の穴であり、メイにとって決して慣れる事は無い背徳の場所……それを……。
「さあ、さっきは前のほうを可愛がってあげたし……今度はこっちかな?」
「ひぃぁっ! や、やめ……っ、ふあぁ―――っ! そ、そんな汚い……ところぉぉっ!?」
 秘所から溢れる愛液を掬い、濡らした指先を蕾の中心に押し当て馴染ませるようにゆっくりと揉みこんでいく……しわを丹念に伸ばし、繰り返し撫で、ほぐすような動作を続けた。自身の愛液を潤滑油代わりにされ、馴染んだ菊門がゆっくりと緩んでくる。
――――そ、そんな……こ、ここも……こんなところまで……私……くぅっ!
 焦らし抜かれた天使の身体はそんな恥ずかしい場所にさえ快美を感じてしまう。
 じわじわと背筋から湧き上がる妖しい痺れに、腰が逃げるように前に突き出された。怯えを含んだ目が、許しを請う様に男を見上げ、ソレが無駄だと解っていても縋ってしまう。 そして切ない天使の願いは虚しく叶えられる事は無かった。
「恥ずかしいかい? くくく、しかし想像以上にここが良いみたいだな。そんなにお尻でされるのが好きなのかい?メイちゃんは……」
「ひ、酷い……です。わ、私……ひぁぅっ……そんなの違いっ……うくぅぅぅぅっ!」
 屈辱の指摘にメイは必死に首を振り漆黒の髪を振り乱し、不浄のそして背徳の感覚を否定しようと虚しく足掻く。自身のうちから湧き上がる感覚を持て余し、おぞましさにその身を震わせた。デスパイアに菊門が裂けようと腸壁が瀕死の悲鳴を上げようとお構い無しに無茶苦茶に貫かれ責め抜かれた暴虐の肛姦。激痛と苦悶が捻じ曲げられ、無理矢理快楽に摩り替えられた凄惨なアナルレイプの記憶。そうやって散々に苛め抜かれて来た被虐の穴が、初めて受ける優しい肛悦マッサージに抵抗など出来るわけが無い。
「ふ〜ん……何が違うんだい? こんなにお尻の穴ヒクヒク震えさせちゃって……随分と俺の指が気持ちいいって言ってるし?」
 そんな口だけの抵抗を嘲笑うかのように、指の先が窄まりの縁を傷つけないようにゆっくりと円を描くようにくすぐり、皺の一つ一つを拡げるかのようにクリクリと繊細な動きで天使の後ろの蕾を狂わせ、悦ばせてゆく。不浄の場所を嬲られるおぞましい筈の行為……。なのに背筋をジワジワと走るのは痺れる様な、くすぐったい様な甘美な感覚で、腰の奥は背徳の期待感に疼き、前のお口からはジュン……と恥ずかしい雫が新たに溢れ出してショーツを濡らす。
「だ、駄目ぇ……駄目なんです……ひぅっ! そ、そこぉ……そこは……ああぅぅっ!!」
 クイッ・・・
 喉が、背中が弾けて、一本の弓の様に反り返る。ついに指が侵入してくる……狭い菊尻をクリクリと擽りながら……。
「くはっ、あはぁっ……そんなとこ……ひぐぅ……は、入ってこないでくださいひぃぁ〜〜〜〜〜っ!」
――――お、お尻……入ってくるぅ……お尻……き、きちゃい……ますぅ〜……っ!
 涙に濡れた瞳が見開かれ、尾骨を走る甘い痺れに慄きながらメイは、ゆっくりと侵入してくる指に押し出されるように長い息を吐き続けた。自分の中の何かが押し出されていくような息苦しい感覚。散々指でほぐされたソコに痛みはほとんどない。それでもやはり本来排泄するための器官への異物の侵入に違和感と圧迫感に苦しんだ。
「あっ……はぁ……く、苦しぃ……くぅ〜〜〜〜……っ」
 根元まで入り込んでようやく指は動きを止めたが異物感に満足に呼吸も紡げない。
 愛液を潤滑油にした指を、無駄な贅肉の無い鍛え抜かれた天使の筋肉が侵入者を排除しようと無意識にキュッキュッと締め付け続け、その度に括約筋と腸粘膜が指とこすれ合い、危険な痺れと妖しい掻痒感が背筋を駆け上がってくる。正義の天使はお尻に挿し入れられた、たった一本の指に呼吸さえも支配され、ただただ恥ずかしい場所から送られる感覚を否定し、耐える事しか出来なかった。
「おうおう、スゲエ締め付けだぜ。俺の指が食い千切られそうだ。そんなに俺の指は美味しいかい?」
「ぐぅ、ああぅッ……だ、誰が……こんなのおぞましいだけですぅ……は、早くぅ……あくぁ……ぬ、抜いてくださ……い〜〜〜っ!」
――――ま、負けては駄目ですっ……こんな……こんな事で私は……で、でも……でも……こんなお尻でなんて……
 天使としての自分が必死で己を鼓舞するメイ。誇りと矜持と使命が送り込まれる妖しい感覚に抗おうと足掻いた。
 しかし、時間を追うごとに違和感や異物感、圧迫感といったメイを苛んでいた感覚は薄れて行き、逆に指に馴染んだ菊門が盛んに妖しい背徳の感覚を送り込んでくる。
「素直になりなよ。お尻が気持ちイイって、あたしお尻メロメロなの〜って、ひゃはははっ」
「う、ぐううぅっ、そ、そんなのぉ……わ、私……あ、くぅ……耐えなきゃ……駄目ですぅ。私ぃ……くひあぁっ!?」 
 バネ仕掛けの人形の様に腰が跳ね上がる。悲壮な決意を嘲笑うかのように動きを止めていた指がゆっくりと引き抜かれていった。指一本で腸を引き出されていくかのような感覚に背中が突っ張る。強制的に味合わされる排泄の快楽、異物感が消えさってゆく爽快感に勝手に卑猥な喜声が漏れた。
「いひぐぅ〜っ……やめっ……おほぉぉぉぉぉ――――ッ!?」
――――ゆ、指……抜け……抜けてますぅ〜……あ、あっ……お尻ぃ擦られてへぇ〜……引っ張られはぁぁ〜〜っ!
 まるで出て行かないでと懇願するように入り口がキュッと締まって指を締め付け、括約筋がスリスリと内側から捲り磨られ、引きずり出されるように甘い吐息を吐き出す。
「ひははは、おいおい? 抜いて欲しいんじゃないのかい? くくく……まあ止めて欲しいってならまた入れてやるよ。ほれ」
「ち、違っ……かはぁぁ……そんなまた入って……ひぐぅぅぅぅ――――っ!!」
 指先が引き抜かれる寸前にまた奥の奥まで押し込まれた。再び菊門がほじられ眼瞼の裏を閃光が駆ける。
 ゆっくりと螺旋回転を加えながら抉りこまれ、倍の時間をかけて逆回転で引き抜かれた。間断なく押し寄せてくる圧迫感と開放感。菊穴を磨られ、ほじられ、くすぐられる恥ずかしい痺れ。
「だ、駄目なんです……そ、そんな……そ、そんな卑らしいところほじらないでぇ〜っ!?……ッく……ル……き、来ちゃいますぅ〜〜っ!」
 排泄の際の快楽は老廃物を体外へ排出するための人間に存在する絶対のメカニズムだ。大小の差異こそあれ美しき天使でさえ例外は無い。いくら忌避しようと背徳感に苛まれようと逃げられない。そんな危険な快楽を媚薬に蝕まれ、散々に調教されつくしたメイのお尻が耐えられるわけは無かった。
――――だ、駄目ぇ……お尻でなんて私ぃ……お尻で指をクリクリされてて私ぃ……
 何より焦らしぬかれ、欲求不満に燻り続けていた肉体はもはや快楽の種類など選り好みしてくれない。汚らわしい背徳の場所から迸る卑悦さえ嬉々として受入れ、全速力で絶頂への階段を駆け上がっていく。指が排泄口での抜き差しを繰り返し、その度に激しさを増しながら送り込まれる快堕の淫撃に抗う事さえ出来ずに打ちのめされた。指の腹で腸壁を優しく撫でられ、指の背で菊座を削り抉られ、爪先でカリカリと腸内を引っ掻かれる。次第に腸内から溢れる腸液に指の動きはスムーズになり、引き換えに淫らな水音を響かせた。
「あはは……こりゃすげえな。お尻の穴からも溢れてくるぜ? メイちゃんはお尻の穴でも濡れる事を憶えてるのかい?」
「い、いやぁ……っ、言わないで……そんな事言わないで下さいぃ〜〜〜……っ! こんな……お尻クチュクチュって……い、いひゃぁぁっ!? ゆ、指ぃ……指増えてぇぇぇ!? あひぃぃいぃぃぃっ!!」
 2本に増えた指の激しいピストン運動はさらに加速し、根元まで突き貫かれ、指先まで一気に引き抜かれる。
 増えた指が複雑な動きさえ加えながらメイのお尻の中を猫可愛がり、刹那さえ抗えずに肛悦の虜となっていく。そんな肉体の反応を男に嘲笑われ、なのにもはや拒絶も否定も出来ず、はしたなく泣き声を上げる自分。デスパイアの残酷な調教の果てにお尻や腸粘膜でさえ感じ、濡れる事を憶え込まされた艶尻にはあまりに辛く甘過ぎる悦責め。喜悦の涙で霞んだ視界、卑悦で痺れきった意識に、あれほど待ち望んでいた快楽の頂点がチカチカと見え始めた。
「お、おし……お尻ぃ、凄ひぃ―――ッ! ひぁあぁっ! こ、こんなの無理ぃ……無理ですぅゥッ! お尻溶け……ひぃっ……溶けちゃいますぅ〜〜……ッ!」
 漆黒の髪を振り乱し、泣き喘ぐ肛悦天使。
 指が螺旋と直線の動きを混ぜあいながら、敏感極まりない快楽玩具に成り下がってしまった尻穴と腸粘膜を抉り、くすぐり、擦り上げる。立て続けに指で味合わされる擬似排泄感が堪らなく愛しい。括約筋は腸液の涎を垂らしながら美味しそうに咥えこんだ指との擂り合いをもうすっかり楽しんでしまっている。腑甲斐無い自分に対する怒りも、背徳の悦びに泣きたくなる程の恥辱も、浅ましい自分の身体に対する屈辱感さえ、お尻から送り込まれる甘美な喜悦に絶妙のアクセントを加えるスパイスでしかない。
「ヒャァハハハハッ……悦んでくれて光栄だぜぇ。さあイッちまいなアナル狂いの天使様。お望みの極みをあげるぜ? それもう一本サービスだ!」
 ヂュッポスッポヂュッポ……
 腸液が溢れ出し、激しさを増したアナルピストンに卑猥な重奏を追加する。未だメイの美尻を隠す黒いショーツが中の指の動きを浮かび上がらせ、淫らに蠢いていた。指のピストンに合わせるように揺れる腰の動きに白のドレススカートがはためく。
「えひぉおぉォっ! さ、三本もほぉぉぉっ!? やッ! おし……お尻ぃ……お尻でェ――っ!お尻なんかでぇ―――ッ!!」
 嘲りの掛け声と共に3本へと追加された指が肛悦の泥沼に首まで使って足掻く天使にあっさりと止めを刺した。
「あひぃあああああっ! イッ…クゥぅ―――ッ! お尻……お尻イクゥゥッッ!! イッちゃいますゥゥ〜〜〜〜……ッッ!!」
 刹那の抵抗さえ許されない。限界まで反り返った背中、美尻はキュッと引き締まり、激震する全身を抑えようとするかのように両腕で自分自身を抱きしめる。
 ブシャァッツッ……! 
 堰が決壊する音さえ聞こえそうなほどの、はしたない絶頂お汁の飛沫が黒のショーツにブチまけられた。至悦の絶頂の果てで潮を吹き上げ……肛悦の前に屈服し果てた美しき天使は極め狂う。
「イふアぁぁアあぁぁあぁアぁあぁぁァ――――――――ッッ!!」
 待ちかねた至悦の極みに飛ばされ、長々と焦らされ燻っていた肉体は歓喜とともにそう簡単には降りてこれない。否、降りたくない……。
 喰いちぎられんばかりに締め付ける菊座は一向に指を解放してくれず、断続的に溢れ噴出す秘蜜はショーツから零れだしベッドの染みをどんどんと大きくしていく。
 お尻なんかで味合わされた。極めさせられた。イキ果てた……なのに堕ちた天使の胸に去来するのは、ただただ絶頂に突き上げられた至福の虚脱感と開放感。絶頂の余韻に痙攣する自分の身体を抱きしめたまま、快楽に蕩けきった顔でメイはただただ喜びに泣いた。


 
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