騎翔天使メイ外伝 〜堕天への誘い〜

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ギッシ!! ギッシッ!! ギッシッ!!!
「あっ! あぁ……あっ、ああぁあ……っ!!」
 灯りを消されて薄暗い室内に、ベッドスプリングの軋む音と濡れた水音、艶めかしい色を帯びた「おんな」の鳴き声が響きわたる。
 ベッドの傍に立てられたスタンドの弱い光がベッドの上で絡み合う男と女の情事を照らし出していた。仰向けに組み伏せられたメイの身体の上には全裸の男が覆い被さり、その長くしなやかな両脚の間に男の腰が割り込んで激しく腰を動かしている。
 重なる男と天使の繋がった部分は毛布の下に隠されている。だが、肉の打ち合う音とかき混ぜられる粘りけのある水音……薄暗がりの中であっても、その毛布の下で繰り広げられる情事を想像できないモノは居まい。
「い、いや……ッ!! も、もう嫌でです〜……こ、こんなの……あっ、やぁ、いやなんですぅ〜〜っ!!」
 激しい動きに軋むベッドの上で両手はシーツを掻き寄せ、いやいやをするように力なく首を振った。だが、儚い抵抗を余所に、脳をどろどろに溶かされそうな甘美な快楽に身体は酔わされてしまう。人との交わりがもたらす甘美な悦楽の嵐に、熱く蕩けた秘肉が濡れた音を奏でた。
「お、お願いです。も、もうこれ以上は……んん〜〜〜〜っ!?」
 必死の拒絶に振られていた頬が男の両手に挟まれ、桜色の唇がまたも男に塞がれる。悲しい懇願の言葉は男の口内に奪い去られ、可憐な舌が陵辱者の舌に絡め取られると淫らなダンスの相手を強要された。ヤニだらけの黄ばんだ歯と真珠色の美歯がコツコツとぶつかり合う。涙で濡れた琥珀の瞳が見開かれ、小さく震える喉が反らされた。
――――い、いやっ……? なんでこんなに……キスだけなんかで……ぇ
 最初は緊張し縮こまっていた臆病な舌も、今は積極的に自身を絡めながら心地良い舞踊を舞い踊っている。狭い口の中では唾液が掻き混ぜられる音を伴奏に、淫らの舞踏会が開催中だ。
 口の中すべてが気持ちいい。唇の裏を甘噛みされると後頭部のあたりがピリリと痺れる。歯茎や歯の一枚一枚を丹念に舐めくすぐられるのが癖になってしまいそうだ。
――――いや……違う……違うんです。私……わたし……
 誰への言い訳か必死に意識の中で否定し、ギュッと目を閉じる。
 男の身体に押さえ込まれたメイの細身は未だに天使(エンジェル)の聖衣を纏ったままだった。魔法の力で装着されたこの衣装を脱がすことが出来ず。ただ大人びた黒のショーツのみは剥がされ、床の上に乱雑に脱ぎ捨てられた男の衣服の上に、くるりと丸まっていた。
「ふぅ……やれやれ、まだそんな素直じゃ無いこと言ってるのかい」
「はぁ……はぁ……はぁ……あぁ……」
 長い舌舞の末にようやくメイの唇は解放され、混ざり合った唾液のアーチが二人の間をつなぐ。酸素を求めて喘ぐ天使の瞳は虚ろで、ベッドスタンドの弱い灯りに映し出される美貌は媚熱に紅潮していた。酸素を求め荒い息を付く天使の唇の端からは透明な雫が伝い落ちる。
「素直に快楽に溺れちまえばいいのに……安心しろって、あんたが俺なしじゃあ居られないのうぅ〜って、くらいメロメロな身体になったって、ず〜っと可愛がってやるからさ……」
「はっ……あっ、や、いやあぁ……そんな……そんな……事……ぉ……ふぁぁっ!!」
 まるでお前を飼ってやると言わんばかりの言葉にさえ満足に返事も返せない。反らされた喉を唾液の痕を残しながら舌が這い、天使の悲痛な喘ぎと甘い嬌声が響く。二人の動きにベッドが悲鳴を上げながら激しく揺れ軋んだ。
 必死に噛み殺された艶を帯びた喘ぎ、嫌悪と屈辱、そして隠せない情欲を宿した艶声――快楽の前に幾度となく敗北した天使は、それでも勝ち目の無い戦いに挑む事をやめない。押し倒され、男に延々と抱かれ続けながらも抗った。
「ふ、ふぁあぁ〜〜……やぁっ……み、耳ぃ……耳噛まないで……あきゃうぅぅ―――ッ!」
 そんな必死に沸き上がる感覚を否定しようとする強情天使も、耳たぶを甘く噛まれるだけで背中が悦びに震えて抵抗を忘れる。ベッドのシーツを縋るように握りしめてしまう。
―――わ、私……どうして? こんなに身体が熱くなって、堪らなくなって……私どうしてしまったんですか〜?
 蕩ける脳裏に幾度も浮かび上がる答えの出ない疑問。否、答えが出ないのではない。答えはとっくに出ているのを天使の潔癖な心が否定しているのだ。初めての人間の男性相手の情交に、自分が溺れかけているという事実を……
 認めたくない。突きつけられている自分の淫らな現実を……。認めたくない。自分がこんなにも快楽に弱い女であることを……。
「これから、その極上の体に毎日、毎日、毎日……女の悦びを教えてあげるからな♪」
「そ、そんな、いらない……いらない……ですぅ〜〜。いやっ、はぁ、あはぁああぁッ! わたし、そんなぁ……くうぅっ、やっ、ふ、あぁああぁ〜〜!!」
 触手の様にありえない動きで無茶苦茶に掻き回される事は無い。腕ほどもあるような巨杭で全てを征服され尽くす事も無い。無数の蟲に占領される様な責めでもない。
 あくまで普通の責めだ。卓越した性技の持ち主ではあるが此の男はただの人間なのだから……なのに……それなのに……そう言った「ただの交わり」にメイはあまりにも無知だった。
 人が普通に受け止める事の出来る快楽の嵐、薬や魔力の助けなど無くても堪らなく気持ちよくなれる至高の法悦、そう言った性交をまったく知らなかった。
 それがたまらなくメイの「おんな」を熱く濡らす。男の動きにあわせ、厚い胸板に潰された形良い胸の頂が擦れあい、黒のインナーがずりおろされ露にされた桜の蕾から危険で卑しい電流が駆け上がった。
 微かな媚電流がは背筋を伝播し、下半身から断続的に襲い来る堕悦の雷光と脊髄で合流すると脳天へと突き抜ける。堪らえ切れず反らされた白い喉を、男はさも美味しそうに舐め上げた。
「あああぁぁっ……ひあぅっ……こ、こんなの……こんなのってぇ〜〜ッ!!」
 胸が、腰が、男と重なり合う熱く火照った肌のあちこちが快楽を受信して我慢できない。絶対的でも、絶望的でも、破滅的でもないただの快楽が堪らなく気持ちいい。
 男と肌を合わせ、初めて異性と呼べる存在を受け入れた身体が勝手に女の悦びに目覚めていく。どうしようもなく乱れてしまう。抗いようもなく溺れてしまう。
「んぁああぁぁぁ―――ッ!! 胸……胸ぇ〜〜〜……胸弄っちゃぁ〜〜〜〜〜っ!!」
 キュっと指先がメイの理想的な釣鐘乳の頂をつまみあげた。媚薬と男の責めで快楽神経をむき出しにされ、掠めるだけで悦びを提供する堕悦の玩具が久々に送られる鋭い刺悦に歓喜の悲鳴を上げる。
「へへへ……こんなにいい胸してるのに……そりゃあ勿体無いな……んちゅっ……」
 スリスリと指の腹が、乳頭のすそ野を挟んで擦る。逆の胸では男の唇にすっぽりと包まれた乳首が舌と歯の甘い洗礼を受けている真っ最中だ。惰弱な快楽乳果はメイの意思に反し、甘く淫らな電流を盛んに脳へと発信して散々に苛めてくる。
「あひぅん……胸ェ〜〜!! そこ噛んじゃ……はぁあん……吸うのもだめですぅ〜〜〜!!」
「うぅん、だめだめって注文が多いなぁ……わがままいっちゃ駄目だよ。メイちゃん」
 カリッ!!
「ひあぁぁぁッ!!」
 桜色の頂を甘噛みされると、その一点から迸った淫撃に脳を殴打され、白い喉を弾かれるように反らす。男の責めの何もかもにこの身体は過剰に反応を返してしまう。情けなかったこんな卑劣漢に屈し、悦んでしまう卑しい自分の身体が……
「やあっ……いやぁっ……いやあああぁっ!! こんな……どうしてぇぇ? こんなに身体が気持ち……こんなに気持ちいいんですうぅ〜〜? こんなのおかしひぃ〜〜〜……っ!!」
 縮れた陰毛に剥き出しのクリトリスを擽られ、思わず叫び漏れてしまった本音に青ざめる。そしてニヤニヤと笑う男のを仰ぎ見て必死に声を上げた。
「あ……ち、違っ……こ、これは……違います〜〜っ!!」
 怯える様に首をフルフルと左右に振る。だがいったん声に出してしまった言葉はどんなに否定しても戻らない。掛けられるだろう侮蔑の言葉に、暴かれるだろう惨めな天使の敗北の証に身体がギュッと縮こまる。
「わ、わたし……私は媚薬の……デスパイアの媚薬のせいで無理矢理……あ、ひぅうぅぅっ!!」
 そうだ。これはデスパイアの媚薬に身体がおかしくなってるから、だからこんなに感じてしまう。
 自分は無理矢理身体を奪われて感じてしまうような女じゃない。イヤらしい女なんかじゃない。貞淑な聖女の心が上げる必死の、しかし言い訳じみた言葉は……。
「おやおや? 今さら何言ってるんだい。そうさ、メイちゃんは薬で狂わされてるんだぜ? 仕方ないじゃないか」
 否定されることなくあっさりと受け入れられる。
「はぁ……はぁ……ぇ?」
 涙で濡れた瞳が驚いたように男を見上げた。
 デスパイアに犯されるたびに指摘され、揶揄されてきた自身の浅ましくも恥ずかしい肉体の反応。あまりにもあっさり快楽の前に屈してしまう身体を嘲笑われ、卑猥な汚辱の言葉を浴びせられ、純情な天使の心をズタズタに引き裂かれてきた。
 否定され続けてきた虚しい言い訳、淫らに狂う肉体に裏切られ続けてきた高潔な精神があげる悲痛な嘆き、それが優しく髪を撫でられながら肯定される。
「な? 薬なら仕方ないだろ? つまらない意地なんか張ってないでさ快楽に身を任せちまいなよ。優しくしてやるから……」
「そ、そん……な……はっ……んっ」
 男の手が繊細な動きで戸惑うメイの頬を撫で、首筋をさすり、耳たぶを指でくすぐる。紅潮していた肌がさらに熱を帯び、敏感になっている神経に恋人がもたらすような優しい接触が甘い甘い電流を流した。
――――そ、そんな……ま、またこんな……優しく……ふぁっ……だ、駄目……です〜……ッ
 羽根の様な軽い口づけが首筋そっと打ち込まれ、背筋に走った甘美な電流に白い喉が曝される。
 首に頬に鎖骨に額に眼瞼の上に……痺れるような甘い口づけの雨が降り注いだ。愉悦の炎に天使の心身が焦がされてゆく。こんなに優しく扱われた事も、甘い快楽に誘われた事なんてなかった。メイの心と体に消えることなく刻まれた暴虐の記憶とのあまりのギャップに心と身体が否応無く揺らされてしまう。
「あ、や、いやあぁっ……こ、こんな……こんなの……ひ、卑怯ですぅ〜……はあぁ……ま、また優しくするなんて……あひうぅ〜っ」
「なんだ? 乱暴にされる方がメイちゃんって燃える口かい?」
 クスクスと意地悪げに笑い、天使の黒髪の一房を掬い、指先でクルクルと弄ぶ男のなんと憎らしい事か……
「くあうぅぅっ……そんなの違いますぅ〜!! けれど……こんな……こんな事ぉぉ……っっ!!」
 危険な快楽への誘惑を拒絶しようと足掻く天使に、とどめを刺すべく緩やかに腰が動きを再開しはじめた。
 浅くゆっくりと中を突かれると腰奥からも蕩ける様な痺れと熱が沸き上がり、思わず眼瞼を閉じる。緩やかにしかし力強く胎内に抽掻を繰り返され、子宮口を亀頭で断続的に小突かれメイは堪らずに高らかに鳴かされる。
「ほぉらほぉら、難しい事は今は考えないでさ、二人で気持ちよくなっちまおうぜ? 可愛い騎士(ナイト)様」
「あっ、ふぁっ……や……だ、だってこんな……わ、わたし……わたしィ……」
 卑怯だ。自分がこの快楽に屈する為の言い訳を……逃げ道を与え、巧みに惑わせる。
 媚薬のせいなんだから仕方が無い。死ぬ心配も、デスパイアに魔力を奪われる心配もないから負けたってかまわないと……メイの心に逃げ道を与え、言い訳を許し、淫堕の宴へと誘う。
――――だ、駄目……駄目です〜。こんな人の言葉に流されちゃ……で、でも……アソコも、胸も、体中が痺れて……熱くなって……も、もう……わたし……
 無理矢理奪われ、開かされた体が勝手にトロトロに熱く溶けていく。蜜壺と化した子宮内から、膣襞の一枚一枚から、枯れることなく甘い蜜が零れだし、シーツを、互いの恥毛を、男の肉茎を潤し続けた。
 ギシッ……ギッシッ……ギッシッ!!
「あっ……やあぁっ……ひあぁっ……もう……だめぇ……もうだめぇえェ〜〜っ! あぁ、やあぁあ〜〜〜ぁッ!!」
 腰が巧みな回転を加え、挿入と角度を微妙に変えながらめざとくメイの弱点を見つける。あとはその弱点を鈴口で、カリで、竿で執拗なほど丹念に可愛がるだけだ。弱所責めの連打に女体は加速的に高まり、悦び、それに反比例する様に心は悲痛な嘆きに染まっていく。
 膣内がドロドロに溶け落ちそうだ。頭の中がグチャグチャに蕩けてしまう。でも……それでもいいのかも知れない……。そんな甘えた事を考える自分がどこかにいる。
「ほんと、最高だぜメイちゃん。こんなにイイ女を抱いたのなんて初めてだよ……すごい素敵だぜ?」
「はっ、はっ……あ、貴方なんかに……はぁっ……ほ、褒められたって……嬉しくなんて……ないですぅ〜……あ、ひぃやぁっ!!」
 紅く染まった可愛い耳朶に男の唇が触れると、タバコ臭い吐息と共に屈辱の賞賛を送られた。陵辱者に図々しい言葉を囁かれて反論もまともに出来ない。自分の浅ましい反応から逃げるように顔を反らす。
「メイちゃんの身体と俺ってさ。相性抜群みたいだからねぇ、ほおらそんな嘘ついたってこうすれば……」
「ひィっ、やっ、ひぃやああぁ……っ!! いひゃぁっ、ひゃめぇ……ふぁあああァ〜〜〜〜……っ!!? そこぉ……そこだめえぇぇ〜!!」
 反抗がまったく許されない。こうやって抱かれていると男が腰の動きをちょっと変えるだけで、胎奥がヒクヒクと悦びに痙攣する。胸の頂で固くなった二つの尖りが男の胸毛と擦れ合うだけで乳果の芯がビンビンに元気になった。頬をすり寄せられるとひげが当たって囚われの天使の屈辱を煽る。
―――も、もう流されてしまいますぅ〜……こ、こんな人にたぶらかされて……けど……だけど……こんなのって……
 こんな名前も知らない男に犯されて……抱かれて感じてしまう。高潔な天使の心を惑わし堕とそうと誘う、まさに悪魔の囁き……自分の中に感じる男の熱と存在。固く熱いモノが自分の中にあるのが、知りたくも無いのにハッキリ判る。密着した肌が、男に抱かれたという印象を嫌になるほど突きつけてきた。
 触手に突き犯されても、異形の獣根に掻き回されても感じる事のなかった「男に抱かれる」という強烈なイメージがメイの脳裏に焼き付き、女性として完成された体を勝手に燃え上がらせる。
「まあ、いいか……うっ……そろそろおれも限界だ……おしゃべりはここまでにしようぜ?」
「あ……え? ……くぅあううぅぅっ!! な、何を……ッ!?」
 シーツの上に力なく投げ出していたメイの両手に男が掌を合わせ、指を絡められた。ベッドの上で磔にされる様に細い両腕伸ばされ、グッと押さえ込むように男の全体重がのし掛かってくる。
 触れあう肌の面積が一気に増し、熱気と汗臭い男の臭いがドッと押し寄せてきた。豊かなDカップの美乳がさらに強く男の体に押し付けられ、柔らかい胸の膨らみが押し潰される。深まった繋がりに身体は歓喜の悲鳴を上げ、全身で男の重みと熱を感じて震える喉を反らした。
「何って……ヘヘヘ、メイちゃんの方もそろそろだろ? そぉらラストだ。一緒に気持ちよくなろうぜ!!」
 ズップズップズップ……
 技巧にまかせた責めが一転して力強い抽挿へと変じ、身体の奥をこじ開けるような激しい……なのに不自然なほど暴力性を感じない責めにメイの中の女が一気に追いつめられていく。
「あっ! くああぁっ!! こ、こんなぁ……あふううっ! は、激しすぎてぇぇっ……ふひぅうゥゥッ!」
「へへへ、何言ってるんだい。気持ちいいだろ? 堪らないだろ? ほらエッチな天使様……」
 嵐のような男の動きに、悲痛な……否。快楽に濡れた鳴き声が上がった。激しく貫かれる衝撃に揺さぶられる振動さえ心地良い。男は無心に天使の中を貫き、掻き抉っていく。濡れた秘肉を攪拌される様な音が一際高く響き渡り、淫らな水音と高い嬌声がそれに混ざり合った3重奏が室内を支配していった。
「いあっ……やあっ……いやああぁあッ!? な、なんですぅぅ……? 何なんですコレぇ〜〜……ふぁあああぁ――っ!! 知らない……こ、こんなのなんて知らないんです〜〜〜っ!!」
 身体や脳が受け止められるギリギリの快楽がもたらす境地……。魔虐や暴悦では決して知覚できない緻密な悦びが、繊細な快楽がメイの肉体だけではなく心まで追いつめていく。
 どちらが感じると言う問題ではなかった。デスパイアの責めは暴風のような、雪崩のような何もかも押し流し、塗り潰し、踏み砕く悦虐。そしてこれは鋭利な刃物のような、研ぎ澄まされた針のような心を、肉体を貫き、切り裂いていく悦楽……質が違う、方向性が違いすぎる。
「さあ、メイちゃん最後までいこうぜぇ……気持ちよくいっちゃおうぜぇえぇ!!」
「あふあぁぁっ、だ、だめぇ……だめなんですぅ〜〜!! こ、こんなのォ〜〜……いはあぁんっ! わたし天使(エンジェル)なんですうぅっ!! ま、護らなきゃ……皆を……あの子を……ッ!! あひぁあぁあぁっ!?」
―――祐樹くん……ッ!!
 快楽に溺れる天使のギリギリの瀬戸際を支えるのは大切な家族、誰よりも何よりも護りたいと想い、幸せを願う。自分の帰りを待ってくれているだろう。あの少年の笑顔……
「ほお、男がいるのか? いいさ……忘れさせてやるぜ……何もかも……ソイツのこともな……」
 男の瞳に宿る暗い嫉妬心、その相手が男だと直感から悟る。名も知らぬその男がこの美しい天使の心のもっとも深く、もっとも大切な場所に居座っている事を牡の本能で知った。その男への想いを踏みにじり、自分へと塗り替えてやると誤解とは言え硬い決意と共にさらに天使への責めを激しくする。
 もはやこの美しい天使は完全に自分の手の平の上だ。メイのどんな抵抗も反論も儚い足掻き……もうすぐすべてが自分のモノになる。昏い征服感と満足感にほくそ笑むと鴉の濡れ羽色の髪に顔を寄せ、その滑らかな髪の触感と香りを楽しむように大きく息を吸い込む。
「あうっ……あひううぅ、も、許し……許してぇ……許してください〜〜……い、いや……こんなのいやなんですぅ〜〜〜〜ッ!!」
「はっ……へへへっ……メイちゃん……天使様が嘘ついちゃいけないぜ。欲しいだろ? ほら! ほら!! ほらっ!!!」
 揶揄するような男の言葉と共に合わせていた掌が解かれ、メイの背中をきつく抱きしめると突き込みがラストスパートへとはいった。接合部で響く淫らの水音と肉が打ちあう音の重奏が嫌でも天使の耳に入り、悲しみの涙が新たに零れ落ちる。
 子宮奥を激しく小突かれまくり、荒々しく突き掻き回され、力強いノックを胎内に送り込まれる。逞しく雄々しい肉根の抽挿に天使の体は恥ずかしいほどに屈服し、奥からは泉の如く愛蜜が湧き出して憎むべき侵入物をシットリと潤し、きつくきつく抱き締めた。
「ひぃ、あ、あァああぁァッ……う、嘘なんかじゃ……なっ、いひいぃいいぃっっ……やっ、もういやあァァ……だ、駄目……もうだめなんですぅ〜〜っ! な、何も……何も考えられなひいぃぃ……〜〜〜っ!!」
 漆黒の髪が白のシーツの上で激しく踊った。首を狂ったように振り乱したと思えば、後頭部を跳ねるように仰け反らせ、柔らかな枕の中に沈み込む。自由になったはずの両手が、無意識に男の背中へと回り、縋るように爪を立て赤い筋を刻む。
「う……ッ!!」
 ドクン!!
 それが合図だったのか……男は腰をメイの奥へと撃ち込み、深々と刺し貫いた。女体の中の最奥、子宮の奥襞に叩きつけるように男の灼熱の粘塊が解き放たれる。
 ピチャリ!!
 聞こえるはずもない粘弾の子宮奥への着音を体内深くに確かに聞いた気がした。鋭敏に研ぎ澄まされた知覚は、幾度となく注がれたデスパイアたちの精とはまるで違うと言う事さえ、意識の奥に刻ませる。
「あっ、あっ、ああっ、ヤッァああああああァァああああああァ〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
 タイミングを計ったかのように、初弾の開放だけで絶頂へと放り上げられた。その熱さに、濃さに、勢いに屈服し、例えようもない法悦の境地へと突き上げられ、昇り詰めさせられた。
 ドピュッ……ドプッ……ドピュルルルッ!!
「あつ、熱い……熱い〜〜〜ィ!! 駄目、だめェエェッ!! 身体止まらないんです!! イヤ! イヤッ!! イヒャァあああああああああああああ〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
 一度では止まらない。立て続けに子宮へと送り込まれる男の精の奔流。膣内射精の嫌悪やおぞましささえも、今のメイにとっては絶頂を助長する存在でしかない。
 中で出されるとか、孕まされるとかそんな事はもう些細な事だった。白いロングブーツの中では可愛い指がこれ以上ないくらいに広がり、長くしなやかな美脚は指先までをピンと突っ張ると、シーツを引き延ばしながら痙攣する。
 ドクン! ドクン!! ドクン!!!
 男が汚い尻を射精に痙攣させながら、腰をメイの脚の間へときつく押し付ける。胎内へと熱い精が解き放たれるたびに天使の身体は絶頂に震え、抱きしめられたまま、抱きしめ返したままその胸の中で幾度となく悦楽の波濤に打ちのめされた。
 自分の中が、奥が、男の精で満たされてゆく……穢されてゆく……
 なのに嫌悪よりも屈辱よりも何よりも気持ちい、心地いい、堕ちてゆく・・・・『女』の悦びを肉の悦びを解き放たれ刻み込まれてゆく。
「ひィあああぁあぁぁ―――ッ、も、イクゥ〜〜っ!! 私イクゥウウゥゥゥ……イッちゃいます〜〜〜ゥゥゥッ!! ……ごめな……さい……あ、ああぁぁああっ!! ごめんなさいぃぃ! 許し……てェ〜〜〜〜ェェェェッ!!」
 それは誰への謝罪なのか?
 快楽の前に打ちのめされた天使の意識はゆっくりと深い闇の中へと落ちていった。
気を失って閉じられた目尻に残っていた銀の雫が伝い落ち、乾ききっていない涙の跡をまた濡らす。自分にとっての大切な想いを踏みにじられるのがあたかも解ったかのように……
「気……失ったか……まぁよく保った方かな」
 気を失ってなお美しい天使、その癖のない漆黒の髪に口付けがら男が呟く。
「けどな……夜はまだまだこれからだぜ?」
 愛しげに囁き唇を重ねる。メイの閉じられた目尻に残っていた銀の雫が伝い落ち、乾ききっていない涙の跡をまた濡らした。
「仲良くしようぜ……朝まで……たっぷり……な。ククク……愛してるぜ、俺の天使様」
 この気高く誇り高い天使の心をこの手でヘシ折ってやりたい。この淫らと無垢が同居する美しい体を犯し尽くし、その清らかな心を何処までも自分の色に染め尽くしてやりたい。それは狂いねじ曲がった歪な愛情。
 ズン……
 僅かなインターバル。腰の律動が再開し、再び響き渡る悲痛な天使の嬌声。月が天頂を過ぎ去る頃それは甘い鳴き声に代わり、夜空が白みはじめるまでそれは止むことはなかった。

 
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