エクリプス図鑑 2

 

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●No3 ヴジャドエクリプス


・モチーフ 悪魔、バジリスク、コカトリス、ヴジャド眼
・分類   上級エクリプス
・人間時  新野瞳
・登場   聖天使ユミエル シャドークルセイド
      聖天使ユミエル2 ダスクリベレーション

      
私立天恵学園女学生、新野瞳が変身する上級エクリプス。
変身後は人間時の儚げな容貌とはうって変わり、悪魔的な美貌とグラマラスな肢体を誇る魔性の美女となる。煽情的な黒のドレスを身に纏い、目玉を意匠したアクセサリが全身を飾る。ドレスの腰周りは極彩色の羽根飾りで飾られ、それらは孔雀の羽根のように展開することができる。その邪悪にして妖美な艶姿は、殻に閉じこもった瞳の暗黒面が攻撃的に解放されてのものである。

ヴジャドエクリプス最大の特徴は、視線に込められた力により様々な効果を及ぼす「邪眼」である。
両の瞳、そして額を覆うサークレットに意匠された目玉から放たれる視線は、強力な魔力を誇っている。その効能は催眠、洗脳、催淫、そして攻撃と多種多様であり、また凝視のみで影響を及ぼす邪眼の効果範囲から逃れることは困難を極める。この邪眼の効果は、使い魔の視線を介して使用することができる(ただし効果は落ちる)。

特殊能力だけでなく、細身に似合わぬ驚異的な身体能力を誇る。その能力の高さは上級エクリプスと相応しいものだ。
もっとも、人間時の臆病で計算高い正確の影響もあり、直接的な戦闘スタイルは望まない。
接近戦は好まず、主に羽根や影から伸ばした触手を操っての遠距離攻撃や、邪眼から放つ視線で相手を弄ぶ。高い能力を持っているが、ネコがネズミを弄ぶようにじわじわと相手を苦しめる手管を好み、その性質は病的なまで陰湿。

いじめられっ子だった瞳の暗黒面を受け継ぎ、安全なところから他者が苦しむ様を見下ろすことを最大の喜びとする。その陰湿な性癖そして臆病さゆえ、数多の使い魔を放ち常に他者を監視している。彼女が「監視眼」と呼ぶこの使い魔は眼球に触手が映えたような異形で、他者の影の中に忍び込ませることができる。また他者の影に影響を及ぼして洗脳したり、エクリプス化を促す能力も備えている。

非常に強力な能力を持つヴジャドエクリプスだが、新野瞳の人間性をそのまま残しており、完全に暗黒に身を委ねているとはいえない。それは彼女がエクリプスとしての力を望みつつも、その目的が「自分の居場所を守り続ける」という極めて人間的なものだからだ。
だが……。

 

 


※蛇足

このヴジャドエクリプスは、当時の弘騎が魂を込めて創造したエクリプスです(敵キャラ大好きなので)。
作中では当然公開していませんが(必要ないことなのでう)、色々とイタイ設定も込められています。

まず、彼女は作品におけるボスの役割です(最初は一巻だけで終わる予定でした)。なので他のエクリプスとは明確に差別化すべく、外見も怪人ではなく美女としました。変身もしますし、その存在理由や悪魔的なデザインなど、ユミエルに対する暗黒のヒロインとして位置づけたわけです。
もっともここにも裏話があって、最初(単行本化される前の段階)では怪物の姿でした。それはヘビと鳥と人間が融合したような異形で、つまりバジリスク(コカトリス)のエクリプスです。しかし編集様からそれは止めたほうがいいとの助言を頂き、悪の女幹部風のデザインへと変化しました。

ここで初期モチーフである「バジリスク」「コカトリス」というものについて少し説明します。バジリスクとコカトリスは元来まったく違う怪物なのですが混同されていた節があり、「バジリコック」という名称も残っているほどです。前者は王冠を頂いた蛇、後者は鶏と蛇のあいのこのような姿形とされていますが、これも色々と混同があったようです。興味がある方は調べてみてください。とりあえずヴジャドエクリプスは両方のイメージを適当に引き継いでいます。

さて、まず邪眼を武器にするキャラということでこの怪物が真っ先に思い浮かんだのですが、それ以外にもバジリスクをモチーフにした意味はあります。
伝説では、雄鶏が産んだ卵(のようなもの)をヒキガエルが暖めると、そこからコカトリスが生まれると言われています。瞳はいじめられっこで、初期案だと東堂たちにも酷い虐待を受けていました。その絶望によって生まれたのが彼女のエクリプスで、つまりヒキガエルに(東堂)に育てられて生まれた怪物がヴジャドエクリプスということです。

完成版のヴジャドエクリプスのデザインは、初期案のモチーフを若干引き継いだものとなっています。艶々した黒のドレスは蛇の皮のイメージですし、腰から広がった羽根は鳥のイメージなのです。弘騎の好きな某ゲームでは、コカトリスに孔雀の性質が加えられたデザインがされており、それを参考にしました。広がった孔雀の羽根は妖しいほどに美しいですし、目玉のような模様が無数にあることも邪眼のイメージにあっています。総合的には、悪の女幹部のようなデザインで非常に気に入っています。

ネーミングについても悩みました。「バジリスク」コカトリス」ともに長く、〜エクリプスと名づけるには不適当だったからです。最初は「ゲイズ(凝視)エクリプス」という名前にしていたのですが、弘騎の趣味であるTCGのオリジナルモンスターで「ヴジャドバジリスク」というものがいて、そこからアイディアを貰いました。この「ヴジャド」は後述の意味ではなく、作品固有の土地名のようです。

本来ヴジャドと言うのは、エジプト神話の天空神ホルスの瞳のことです。すべてを見通す神の瞳として崇められ、エジプトではこれがお守りとして売られているそうです。全知全能のシンボルみたいです。
邪悪なものであるはずのエクリプスの力に神の名をつけるのはアンバランスな気もしますが、これは瞳が「自分は怪物なんかじゃない」という願望を込めて名乗っているのだと考えています。さらには「神のように全てを見下す」という意味合いも込められています。但し同時に彼女は東堂達に対しては「イビルアイ(邪眼)」とも名乗っており、屈折した彼女の性格、そして苦悩が見て取れます。

瞳の性格を引き継いでの、直接矢面に立つ事を嫌う陰険なキャラクターは非常に気に入っています。純粋無垢なユミエルに対して、対照的なねじくれたキャラクターが造形できたと思っております。

新野瞳は可愛そう系の敵キャラのつもりだったのですが、ユミエルがそれ以上に可愛そうだったらしく(汗)、あまり同情してはもらえていないようです。
なんにせよ、デザイン、能力、そしてキャラクター性、すべてにおいてユミエル最大の敵として不足ないエクリプスだと思っています。

……実は正義のヒロインとして転生する案もあったりなかったりだった気がしますが。二巻での悪役っぷりはさらに輪をかけたものになっていて、いまでは遠い話ですねえ(汗)。

 

 

 

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