エクリプス図鑑外典 十巻
●エクリプス”キング”
分類 その他
モチーフ 特になし
人間時 稲城 和馬（いなぎ かずま）
無数の魑魅魍魎達を内に飼うゆらめく影を持った男。上級エクリプス級の戦闘能力を持ち、影の力を存分に振るう彼だが、実は厳密にはエクリプスとは言えず、ギリギリの一線で人間の範疇内にいる。いわば、半エクリプスとも言える存在。
彼、稲城和馬は喜怒哀楽全ての感情が通常の人間とは比べ物にならないほど激しく、その欲望も常人のレベルを遥かに超えている。それらは本来ならば人間をひとたまりもなくエクリプスへと変化させてしまうほど強烈なものなのだが、彼はその感情と欲望を拮抗させ、その上にゆるぎない自己と理性を確立させ平然と生きている。
だが、彼の感情のゆらぎは時に彼の心の内に収まりきらず、彼の影は影魔の力を宿し不気味なオーラを発し、その中から擬似エクリプスとでも言うべき形態を持つさまざまなモンスター達を出現させる。
出現した擬似エクリプス達は彼の命令に従う強力な手駒となる。彼はそれらを使役することで上級エクリプス並みの戦闘能力を発揮し、時にはそれ以上のとてつもないポテンシャルを垣間見せる。擬似エクリプスは彼の感情しだいでいくらでも出現させる事が可能であり、無数の擬似エクリプスを従えた彼の姿は万軍を率いる『王』さながらである。しかし、擬似エクリプス達の存在は非常に不安定なものであり、彼の影から分離してせいぜい３０分程度で朽ち果て、消滅してしまう。また、彼自身の体は生身の人間のものであり、人間としては非常に優れた身体能力の持ち主ではあるものの、下級エクリプスの一撃で砕け散る脆弱なものである。
そんな稲城であるが、彼自身は自分の異常性に無頓着である。それどころか人間とエクリプスの違いすら気にしない、というかそもそも違いを認識していない。彼にとってエクリプスとはあくまで異常な能力を持った『人間』である。彼はそんな異能の『人間』達が暴走する現実に心を痛め、彼らの居場所を作るべくベンチャー企業を立ち上げ、彼が集めた『人間』達を雇い、人間を襲うエクリプスと戦い、可能であれば仲間へと引き入れる活動を行っている。稲城を慕い集まったエクリプス達は、そんな彼に敬意を込めて『キング』と呼び、一般のエクリプスともオメガエクリプスとも違う新たな勢力を形成している。
以下、稲城が影から発生させる擬似エクリプスの一部を紹介する。
○ビースト
ライオン、トラ、狼、ゾウ、犀、爬虫類などをはじめとした様々な動物の特徴を持った戦闘用擬似エクリプス。それぞれの個体によって大きく形態を異にし、その能力も同じく異なる。例えば、５メートルを越える巨体を持った肉食獣型、ゾウの牙や犀の角を体の前面に幾本も備えた突撃型などである。
○スカル
高密度の影で作られた骨格に、霧のような黒いオーラをまとった兵士達。ビースト型に比べ単純な戦闘力は劣るが、より正確に稲城の意思に従い統率の取れた集団戦法を得意とする。
○ソード
影によって形成された各種の武器。稲城は好んで剣型を用いるが、用途に応じて斧、槍、弓矢、手裏剣などを出現させることも出来る。
○ビー
蜂型の偵察用擬似エクリプス。ただし、擬似エクリプスの外部活動には上記のような制限があるため、使い勝手が良いとは言えない。
この他にも様々な擬似エクリプスが存在し、中には稲城の感情が爆発したような得体の知れない形状のものも存在する。ちなみに、影の中から触手を発生させる事も出来、女性との逢瀬には何かと重宝しているようである。触手の使い方にも彼なりの見識があるらしく、『テンタクル・マスター』を自称している。
悠美達に対しては現在のところ中立の立場を取っているが、エクリプス達に対する赦しに目覚めた悠美が稲木達に若干好意的な一方で、真理は稲城のやり方に懐疑的であり、羽連母娘の間でのエクリプスに対するスタンスの違いが顕れる形となっている。
「ふははははっ！！！久しぶりに影が滾るっ！！楽しい、楽しいぞっ！！！」
●ファングエクリプス
分類 下級エクリプス
モチーフ 狼
人間時 黒崎 剣吾（くろさき けんご）
もとは内気な青年だったが、エクリプスによって家族を奪われ、その復讐心から自らもエクリプスと化した。しかし、仇であるエクリプスをユミエルによって倒されてしまった事で、行き場をなくした復讐心が暴走。当初は狼の頭を持つシンプルな獣人型のエクリプスだったが、空回りを続け決して果たされることのなくなった復讐心は彼の体をさらに変化させ、体は体長８メートルを越えるほどに巨大化し二足歩行の獣人型から四足歩行の完全な獣へと変貌を遂げた。さらに顔の右半分の牙だけが以上発達して、さながら太古のサーベルタイガーの牙が無数に並ぶ異様な形相に成り果ててしまった。
体の変化に合わせるように、わずかに残っていた彼の理性も磨耗してゆき、ついには暴走。無差別に街を破壊し暴れまわるだけの存在となった彼を止めたのは、エクリプス”キング”・稲城和馬だった。稲城はファングエクリプスの怒りの裏にある哀しみを見抜き訴えかける。「悲しいときには、泣くんだ」「君は、ただ泣き方を忘れただけだ、悲しすぎてな」稲城はファングの全ての攻撃を受け止め、やがてファングの暴走は終息。泣き崩れるファング＝黒崎に稲城は「一緒に来ないか？」と誘いの言葉を掛ける。
それ以降は稲城と行動を共にすることになる。稲城の作り上げたエクリプス集団の最初期メンバーとなり、稲城の右腕的存在となり仲間を取りまとめていく立場となる。さらに、暴走によって得た巨体とパワーに加え、それを制御する理性を持つ事で下級エクリプスとしては破格の戦闘力を得ることとなった。もう二度と大事な人たちを失わないために、彼は仲間の先頭に立って戦い続ける。
エクリプス故の過剰な性欲を持っているようだが、彼のエクリプスとしての能力は戦闘のみに特化したものとなっており催淫とか性行為に関する能力は皆無。そもそもエクリプス状態の巨体で行為に及ぶわけにもいかず、エクリプス化以前は内気で女性に対しても臆病な青年に過ぎなかった彼は、性欲ばかりを持て余す状態になってしまう。そんな時、偶然に出会った悠美に一目ぼれ、以来彼は悶々とした日々を過ごすこととなる。
「あんな事はもう二度と起こさせないっ！俺のためにも、みんなのためにもっ！！！」
●ストリングエクリプス
分類 下級エクリプス
モチーフ マリオネットの糸
人間時 柳 英輔（やなぎ えいすけ）
陰気な性格と容姿のため、女性から疎まれ続けた男が堕ちたエクリプス。人間態、エクリプス態での容姿の変化はないが、指先から発する無数の糸を使い、他人の体を操ることが出来る。彼はこの能力を使って幾人もの女性に望まぬ性行為を強要してきた。今まで女性に蔑まれたコンプレックスを晴らすべく、次々と陵辱を続けた彼だったが、ある日彼が犯そうとした少女が極限の恐怖からエクリプス化してしまう。エクリプス化した少女に半死半生の状態にされた彼は、ようやく自分の今までの行為の罪深さに思い至る。しかし、エクリプスの力を使って犯した罪は現在の日本の司法で立証できるものではない。自らの罪を償う術すら持たず、彼はただ途方にくれる。
そんな彼に手を差し伸べたのは、件のエクリプス化した少女だった。稲城和馬率いるエクリプス集団に保護された彼女は、柳にもメンバーになれと告げる。「強姦魔でも、人間のクズでも、それでも出来ることがあるでしょーがっ！！！」一喝する少女の言葉に彼はようやく心を固める。
稲城一派の一員になった彼は、過去の自分に葛藤しながら、罪を犯すエクリプスたちと一心不乱に戦い続ける。指先から発する強度としなやかさを兼ね備えた糸は、斬撃、拘束、さらには周囲の物体を組み合わせて即席の戦闘マリオネットを作り上げるなど、様々な攻撃を可能にする。直接的な戦闘能力は低いが、彼が退くことはない。打ちのめされ、這いつくばっても、自らの罪に向き合うために彼はエクリプスの力を振るい続ける。
「逃げられないんだよっ！！逃げるわけにはいかないんだよっ！！！」
●ニードルエクリプス
分類 下級エクリプス
モチーフ 針、及びそれをはじめとした鋭い先端を持つもの全般
人間時 倉乃木 百合子（くらのき ゆりこ）
ストリングエクリプス＝柳英輔に陵辱されそうになった恐怖から、倉乃木百合子が変身したエクリプス。表面上は勝気な彼女であったが、その本質は臆病で気弱なものだった。その心が陵辱に対する恐怖によって暴走、彼女が最も恐れる「尖った物」を相手に向けて容赦なく振るうエクリプスと化した。
エクリプス態の彼女の体は硬質の殻に覆われ、その上に無数の針を生やしている。鋭い針は彼女に触れるもの全てをたやすく貫く。手の平から生やした長大なニードルを振るい、さらに全身のニードルを敵に向けて発射することで、遠近全方位に隙の無い攻撃を行うことが出来る。さらには、発射するニードルに毒液、催淫液、強酸などを込める事もできる。
エクリプスの能力によって危機を逃れた彼女だったが、彼女に害を成そうとした相手であるとはいえ、柳を死の一歩手前まで叩きのめした自分自身に強いショックを受けた。いとも簡単に命を奪おうとした自分、それを乗り越えるために、彼女は自分を保護してくれた稲城和馬達のもとで戦うことを決意する。恐怖に振り回され、いたずらに暴力を振るう自分を乗り越えるために、稲城たちエクリプスの集団に身を置く事にしたのだ。
そして、エクリプス化がもたらす抗い難い衝動を知るが故に、彼女は自分を犯そうとした柳にすら手を差し伸べる。力を振るって犯した罪は生涯消えることが無くとも、それでもそれを乗り越えていくことが出来るはずだと信じるために。
「私に、触れてみる？」
※以上、ＤＤＳ様の生み出されたエクリプスです。投稿ありがとうございました！