エクリプス図鑑外典 三巻 P1


次へ



●メディラエクリプス

・モチーフ 甲殻類(何かを背負い擬態する習性を持つタイプの甲殻類。恐らくは医療器具を背負った蟹)
・分類 下級エクリプス
・人間時 大津 竜也




大津家は何代にも渡って優秀な医師を育ててきた家系である。彼、大津竜也はその中でも特に優秀であり、「神の如き天才」とまで呼ばれ将来も期待されていた。彼もその期待に答えるように、あらゆる医療に関わるすべての事で、優秀な結果を残してきた。彼の研究功績により実用化された医療器具、新薬も多く、世界中で多くの人間を救っている。
彼は常々、「自身の研究で世界中の人間を永遠に健康にしてみせる」と言っており、周りの人間も彼の手にかかれば"いずれこの世界から病気にかかる人間がいなくなるのではないか"などと冗談めいて言う者もいた。
しかし彼の目標は"死なない、病気にもならない人間を作り出す"事だった。その彼が次に研究し始めたもの、それは、"女"だった。生き物を生み出すそのシステムを研究することで、病気になってもその部位を作り直す事で完治させる事ができるのではないかと考えたのだ。
研究は最初のうちは順調であったが、彼が"生死を問わず女性の体を研究、解剖、検体を行っている時に異様に興奮してしまう"という異常性癖に目覚めてしまい、さらに彼がその性癖を受け入れてしまう事で状況が一変してしまう。
それから彼が担当した女性患者の死亡率が突然増加し、手術の際に「麻酔の量を減らして手術する」「患部とは関係ない部位を切る」「手術時間を引き延ばす」などの異常行動が目立つようになる。最初のうちは「次の研究に必要な事なので行わざるをえなかった」(これは詭弁でもなんでもなく彼の本心なのである)と言う言い分にも、これまでの功績や家系の力もあり、それらの医療ミスも隠匿してきた。が、あまりの多さに隠し通せなくなり、各方面からの責任の追求は免れず、ついに彼は医師会から追放されてしまう。

しかし、彼の"研究欲"は留まらず、逆に自分の研究を邪魔されていると思い、その黒い感情のままエクリプス化。
血を吸った包帯のようなもので全身を包み、医療器具をデタラメに繋ぎ合わせたような身長2メートル程のロボットのような姿を取る。包帯の隙間、全身のどこからでも金色の触手を伸ばす事ができる。
しかし、これはあくまで外装のようなものに過ぎない。本体は1メートル程度の大きさしかなく、自身は機械の中心部にいて、全身から生えた触手で機械類を繋ぎ合わせ「操縦」している、顔のような部分は医師が使う、顕微鏡とサージカルルーペを合わせたような物で、本当の眼が時折、首の付け根から覗いたりする。本体の一部が常に出ているのは右手の鋏だけなのである。左手は器具を扱うために指が6本生えているが、使わない時には畳んで収納している。喋る時には肉声と機械音声をちぐはぐに合わせたような声になる。

エクリプスとしての特殊能力は「振動」。体中から生えている触手を様々な周波数で振動させ、超振動カッターのような切れ味を触手にもたせることができる。またこの触手は、束ねる事でシールドにすることも可能。
獲物を捕まえる際には相手の体に絡ませるだけでなく、体の構造を知り尽くした医師経験を活かして筋肉や筋などのポイントを選び、そこに触手を這わせ振動させる。ポイントをつかれ振動させられた部位は、無理矢理に筋肉を解され、筋肉や筋を一切収縮できない状態にされてしまう。力を入れることすら出来ず、まったく動けなくなった獲物は、精神が壊れるまで研究素材として研究されてしまうことになる。
その際メディラエクリプスは、相手が女の場合、外観を傷つける事なく体の内部のみを研究する、毛程度の細さの触手を体の穴という穴から侵入させた後、その触手をさらに細かくし、ミクロン単位まで細くなった触手で血管に侵入。果ては毛細血管の中にまで侵入し、体の隅々までを彼の管理化に置いてしまうのだ(その際、彼の気分次第では快感を与える周波数の振動を送る事もある)。
メディラエクリプスに捕らわれた人間は、精神が壊れて使い物にならなくなるまで、殺される事はない、その間、どんな以上が起きても蘇生させられてしまうのだ。そもそも手術室を丸ごと取り込んだようなものなので、人間を"生かす"ための器具には事欠かないのである。心臓が止まれば電気ショックもできるし、エクリプスの超常的能力なのか体内で各種薬物も精製可能なのである。
また、人間の精神を壊さず繋ぎ止めておく薬さえも体内で作り出す事に成功したという・・・。

そんなメディラエクリプスの弱点、それは肉体的な虚弱性。即ち、エクリプスとしては破格に脆いのである。しかも傷ついた部分が完全に直るまで、人間と同じくらいの時間が掛かってしまう。特に触手は切られると直るまでに半年近く掛かってしまう時もあるのだ。それゆえ常に硬い外装で身を守り、触手はここぞというときにしか出さない。
しかし自分の欲望を満たしたいという執念は強く、それを可能にするために頭を使った、エクリプスとしては最弱の部類に入る下級エクリプスなのである。

実は彼の研究欲は研究対象を人間だけでなく、エクリプスにまで及んでいる。エクリプスの驚異的生命力に興味を誘われたのだろう。そしてすでに何体かのエクリプスは"研究"し終わっている。腰の部分からサソリのような尾が生えているのだが、これは本来メディラエクリプスには無い器官で、研究が終わったエクリプスの一部を自分自身に移植したものである。

ある時、何体目かのエクリプスを研究している最中、そのエクリプスが天使の話を耳にした、以前に研究したエクリプスも似たような事を言っていたので詳しく聞きだすと、その人間は光翼天使と名乗り、女でありながらまともにぶつかって勝てるエクリプスがいない程強く、エクリプスを滅ぼす事ができるのだという。"それ"から聞き出せた情報はその程度だったが、彼は俄然興味を引かれた。
エクリプス以上の生命・・・しかも女なのだ、これを研究せずにいられようか! 彼の頭の中は光翼天使の事で、埋め尽くされていた・・・。

「君の体を研究ス・・スルコトで世界中ノ・・ノニンゲンが救われるのだダ・・ダカラキミハ私の研究にキョ・・キョウリョクシナければならないのだ!!」


オメガ様のお言葉

あらあら、これは変わったエクリプスねぇ。
殻の正体は手術室なんて面白いわ、機械を自分の身体に組み込んだエクリプスって始めてかも。
弱っちぃのに頑張った結果かぁ……涙ぐましくて感動しちゃう♪ ま、わたし努力なんてしたことなんてないからわかんないけど……あはは。
まぁ弱くても、この頭脳と執念は見上げたものねぇ。永津は役立たずだったし、代わりにこんなヤツでもいると便利かも。
生い立ちも特殊能力も欲望も、とにかく興味深いエクリプスね。面白ぉい♪


※立体化含め、章山亜鬼夫様の生み出されたエクリプスです。投稿ありがとうございました!

 

 

戻る

TOP